事例 1000年アート里山・庄原
広島県の北東部、島根県と鳥取県に隣接した県境に位置する庄原市は、中国山地の豊かな森林に囲まれた町。ここで庄原観光推進機構さんが、庄原を観光で盛り上げていく施策の中で、庄原の魅力を伝える映像の制作を検討されていました。以前、僕らが制作した、世羅の里山の風景をインバウンド観光客向けにPRするためのムービー『SERA IN JAPAN』を見ていただいたプロデューサーの方から、テイストが合いそうだと声をかけていただいたのが出会ったきっかけです。都市に住んでいるカメラマンではなくて、田舎に住んでいる僕だからこそ、感覚的に分かっている田舎の良い部分を表現してほしいというご要望もいただきました。
庄原にある比婆山は1000年以上前に書かれた日本最古の書物「古事記」にも登場する場所です。1000年続く里山をテーマに、庄原の宝である里山をリブランディングするような動画がほしいというのがご要望でした。伝えたい層として、外の人だけではなく庄原に住んでいる方にも、庄原の良さを改めて訴えかけるようなツールを意識しています。例えば、星空の美しさはいつも見ている地元の人にとっては当たり前の風景。灯台下暗しで、気づいてない自分たちの周りにある、宝物のような環境や歴史を再認識していただくことも目的です。そうすることで、誇りをもって外から来る人をお迎えできますよね。
今回のプロジェクトは、単純な映像制作だけではなく、プロデューサーを筆頭に、マーケター、グラフィックデザイナー、そして僕ら映像の人間がチームとなり庄原観光を盛り上げる発信を考えていきました。タグライン(※1)も決まっていない段階から入らせてもらいましたが、地元の方にヒアリングした庄原の魅力や、庄原として大切にしていることを検討してたどり着いたのが『1000年アート里山・庄原』というタグラインでした。
そこからプロデューサーが、このタグラインに込めた思いをチームで共有できるよう、文章化したものを作ってくれたんです。それが映像のナレーションの原型になり、どう物語を展開するかを考えていく指針となりました。
※1 タグライン タグラインは、企業やブランド、プロジェクトのコンセプトや理念など、伝えたいメッセージを簡潔に伝えるための簡潔なメッセージのこと。
映像の構成を考えるにあたり「里山」の定義を「自然に対して人が手を入れている場所」と解釈しました。里山には人の営みがあるから、田んぼや畑も草がきれいに刈られている。里山を保つことも価値なんですよね。そこでは電波も入らないような場所で昔ながらの暮らしを体験できる宿をされている方や、刀鍛冶や酪農を営まれている方など、様々な営みで暮らしている方がおられます。朝から始まり夕日が沈んでいく1日の流れの中で、そんな古き良き暮らしをしている人の営みに対して旅人が歩いていく目線で物語を展開しました。動画の構成をコンテにして庄原観光推進機構さんにご提案したのち、撮影に入り、編集して完成後、動画公開となりました。
庄原って、大自然の要素と観光要素もあり、面白い人もいる。贅沢な話ですが、撮るネタがありすぎて、取捨選択するのが大変でした。帝釈峡は外せませんし、朝5時に見える雲海かかった幻想的な比婆山の絶景も絶対入れたかった。撮るために朝の3時半から機材を担いで登ったりと大変なこともありましたね。
ポスターにもなっているカットなのが、日本の棚田百選にも選ばれた三河内(みつがいち)の棚田です。ドローンを飛ばして進んで行く途中、くるっと振り返って後ろ側を見た時に、偶然にも丁度朝の斜交した光がパーっと入って来て棚田に当たり、野焼きしている方の煙が幻想的に浮かんでいる絶景を見た時には、みんなで感動しました。
完成した動画は、庄原観光機構のウェブサイトやYouTubeで観ることができます。庄原観光機構さんからは、普段自分たちが見ていない視点のものを見せてもらえた、という感想を頂きました。なにより、僕自身が撮影で関わらせてもらう中で庄原全体の見え方が変わって、庄原をものすごく好きになりました。
今回伝えたかったことは、庄原にまだ残っている古き良きものの価値。僕の経営理念の一つとして伝え残すこと。「情報を形にすることで、社会へ感動と価値を生み出す」があります。そのために僕はカメラを持ってこの事業をやっています。現存している里山も、いつか限界集落になるかもしれない世の中で、もしかしたら30年後は、三河内の棚田がないかもしれない。今あるものを視覚的に残せていることは、今から価値が生まれてくることなんじゃないかなと思っています。
iDSは、映像制作の会社としてお客様の広報、広告、採用の3つのジャンルに力を入れています。県内の企業案件が多いですが、県外の案件も増えて色々な場所に行かせてもらっています。映像制作に付随して派生するキャスティングやスタイリング、制作進行などの業務もワンストップでご依頼いただけるのが強みです。
今後やりたいことは、里山のクリエーターを増やすこと。僕が田舎に来て9年目になりますが、都会にいた時と比べるとかなり心にゆとりを持った状態で仕事ができていると感じます。制作物に対しても良い影響が反映されていますね。田舎でもクリエイティブなことはできるし、むしろ田舎の方が人が少ないので人材価値があがるんです。基本的に僕らの仕事はどこでもできますが、何を作ってどんな暮らしをしたいのか、思い切り振り切って良いと思っていて。田舎に住む、という選択肢もあるよと広めていけたら良いですね。
もっと先のことをいうと、自分は旅をしながら仕事をしたいと思っています。今、観光業の動画制作にも力を入れているのは、おそらくコロナが落ち着いて旅がしたいとなった時に、動画の需要が増えて、動画市場が伸びてくるのは見えているから。楽しいだけの動画なら誰でも作れますが、今回のような里山も持つ本質的な魅力を伝える動画は、本質を分かっている人じゃないと表現できないと思います。僕がお役に立てることであれば、どこであろうと行って撮って、作っていきたいと思っています。
「情報を形にすることで社会へ感動と価値を生み出す」を
理念のひとつに「広報・広告・採用」の3つの業務を
写真と映像の力で企業様のサポートをしております。
東広島市豊栄町鍛冶屋458-1