事例 黄金瓶詰シリーズ
大崎下島の段々畑で育てられた柑橘は太陽の光をいっぱい浴び、雨量が少ないという立地の良さもあって、濃厚な味わいです。「黄金瓶詰シリーズ」はその柑橘を加工した、一味違った瓶詰めシリーズになります。ちなみにこのネーミングは、昔の最盛期には島自体がオレンジ色に見えるくらい柑橘が実っていて「黄金の島」と呼ばれていたそうで、そこから取っています。私はこの「黄金瓶詰シリーズ」を生産、販売をしている「よーそろ」でデザイン事業を担当しているので、ブランディングから個々の商品パッケージまで一貫してデザインしました。
この商品が生まれたきっかけは、地元の農家さんから相談を受けていた、大崎下島産柑橘のブランディングでした。どうすれば島で採れる柑橘の価値を高めることができるか、といったものです。井上は大崎下島に来てから地元の農家さんとは長く交流させてもらっていて、何でも気がねなく相談してもらえる間柄です。相談を受けたからといってすぐに答えは出せないんですが、「よーそろ 」が大崎下島の御手洗地区で運営しているカフェやバーでは、スイーツやかき氷に島特産の柑橘を使用し、それを観光客の方に提供するなどして、柑橘の高付加価値化に取り組んでいました。
取り組みの中でも島特産の柑橘をシロップに使用したかき氷は好評でして、シロップを口にしていただいたお客さんから「これ売ってないんですか?」というお声を時あるごとにいただいていました。そこで我々は、お客さんのご要望にお応えるのと、以前から御手洗のお土産として売れる自社商品を作りたいという思いがあったことから、商品化を進めることになりました。とは言え、どこかにそれに適した工場あるわけではないし、大量に作れるわけでないので、自分たちで作ろうということになり、製造する機会も導入して加工場を整備しました。これまでこうした商品を手がけたことはなかったため、最初はなかなかうまくいきませんでしたが、こういう味が良いんじゃないかとか、できる範囲の目標を設定しながら、試行錯誤しながら何とか商品にすることができました。
「黄金瓶詰シリーズ」のデザインでは、場所に馴染むデザインを意識しました。「よーそろ」が拠点とする御手洗地区は、広島の並木通りや本通りのようなお洒落な街中とは違い、ある意味懐古的というか、懐かしい感じのする場所だと思うんです。なのでこの商品が置かれる場所、御手洗に馴染むものかどうかは意識してデザインしました。また、全てのパッケージにおいても食材が見えるようにしています。柑橘そのものの素材を邪魔しないよう、柑橘自体がデザインになっている佇まいで、ラベルが主張しないようにしています。
今年の1月から販売を始めましたが、好評で今シーズンの在庫はほとんど売れています。初年度なので多く生産できていないということもありますが、理想的な売れ行きなのでまた来年が楽しみです。
社内にいるデザイナーだからできることは、何でもリアルタイムに動けるということ。頼まれてからすぐ動けますし、鮮度が高い情報を発信できることもメリットです。また、商品のパッケージデザインなんかにおいても、外部デザイナーだといちいち依頼しないといけないじゃないですか、依頼するとなると、どこから依頼するか、どのように伝えようか、とかなりますよね。それがインハウスデザイナーであれば、既に情報共有はできているので、動くのは早いです。それに、デザインの前の段階から、例えば商品の味を決めるところからも関わっていたりするので、圧倒的に情報量が違います。
チームで雑談している時にも、デザイナーの視点で「こういうのがあるよ」とか情報共有できるので、小さなことかもしれませんが、デザインの視点からチームに新しい刺激を与えられていると思います。
以前NPOの理事をやっていた頃から、地域課題と向き合うことを続けています。課題の全てを解決できるわけではありませんが、前向きに検討して少しでも良いから解決する。自分がデザインを通じてできることは、良い方向に向かっていくための手助けだと思っています。地域課題に向き合うことで、今回の商品が生まれてきた面もあると思うので、やっぱりそこが自分たちのやるべきこと。やるべきことをやっていれば、次に何をすべきかが出てくるといった感じです。私は地域課題に取り組むことが好きなので、それができている今は幸せです。
そして、やったことがないことでも、失敗してもやってみようよという感じです。失敗することもありますけど、それもやってみないと分からないので。それが「よーそろ」としての企業スタイルです。
コミュニケーションを大切に。ホームページ制作を主として、ロゴ・パンフレット・チラシ・看板など各種デザインをトータルで企画・制作するデザイン事務所です。
広島県呉市中央5-12-28 I・FLAT