事例 オフィスファニチャー PARK
3年前に「と つくる」を通じて三四五屋(さんしごや)の濱本さんを紹介いただき、このプロジェクトはスタートしました。三四五屋さんは主に建築設計・施工をされている企業、その中でオフィスの案件に取り組まれた際に、机はスチール製の製品しか選択肢がないことに違和感を持たれてたそうです。そこで良い空間を作るため、良い家具を自分たちの手で作りたいと思い、家具のデザインを依頼できる人を探して「と、つくる」に相談されたことが始まりです。
三四五屋さんは住宅施工の際に造作家具を作ることはありましたが、オリジナル商品としての家具は初めてでした。この家具を製造するために、製造工場を準備したり、新たにNC工作機械も導入されました。三四五屋さんからの要望はデスク、パーテーション、ワゴンと椅子、この4点のオフィス家具シリーズのデザイン。そして、それらが導入したNC工作機械で加工可能な形であって欲しいというものでした。オリエンテーションからデザイン決定まで1か月というタイトなスケジュールでしたが、僕がデザインした家具のCG画像を三四五屋さんに確認してもらう形で進行しました。PARKシリーズ全体の方向性を最初の提案で気に入っていただけたこともあり、予定通り進みました。
PARKは「公園のような自由で開放的な空間で仕事ができたら、きっと豊かなアイディアが湧き出るはず」という想いから生まれています。とても気持ちの良い公園で仕事をするような体験の再現を、この家具シリーズでは意図しています。象徴的に木材を使い、それを細いスチールフレームを組み合わせることをシリーズ全体の統一テーマしています。木と鉄を組み合わせることで、公園のベンチだったり遊具のイメージにも繋がりますし、全て木で作るよりも、木と鉄の組み合わせの方が軽やかな印象になっていると思います。
PARKシリーズでは木と鉄の取り付け方にはこだわっています。例えばデスクでは木の天板と鉄の脚、2つの異なる素材を滑らかに一体化し、連続性のあるフォルムにしています。この表現にはデザインとしての意図もあるんですが、三四五屋さんからの要望である「NC工作機械で加工可能な形を探して欲しい」というオーダーに応えることで生まれた表現とも言えます。木工職人が手作業で作る形とも違うし、大きな工場で大量に量産できるような作りとも違う、それらの中間にあるNC工作機械を使う三四五屋さんだからできる形を模索することで生まれた形です。
三四五屋さんはその後も新しい機材も導入されて、さらに新しいものづくりにもチャレンジされています。PARKシリーズにおいても、新しいアイテムの追加を計画しています。今回の協業をきっかけに、これから更にという気持ちになられているのではないでしょうか。
今回の協業における僕の役割は、家具のデザインを通じて「御社の技術があればこういうことができますよ」という選択肢を提示することだったと思います。三四五屋さんとしては、自分達が考える以外の選択肢が欲しかったんだと思うんです。そこで「こういう可能性もありますよ」と家具のデザインを通じて新たな可能性を示すことができたと思います。
企業さんが新しいことに取り組むにはエネルギーがいると思います。今までのやり方を変えるには抵抗があるし、新しいことへの挑戦に踏み出せないこともある。その中で僕は、企業さんの今までの延長線上で「ちょっと変えるだけでこのようなことができますよ」ということを提案していきたいと思っています。大きく変えなくても少しの変化でもこういうことができると、可能性を示せるデザイナーでありたいです。
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