事例 Manma icecream house
Non'Z Houseの沖さんとの出会いは、中国経済産業局が主催する「暮らしにいいモノプロジェクト」がきっかけです。このプロジェクトは、モノづくりをしている事業者さんと、デザイナーをマッチングして、商品開発から販路開拓までを行うというものでした。そこに事業者として参加されていたNon'Z Houseさんがブラッシュアップしたい商品としてプレゼンされていたのが、小さな子供が靴下とレギンスを組み合わせて履く「くつしたいつ」でした。沖さんのプレゼンを聞いて、こんなのあったらいいなと浮かんだアイデアを簡単に紙に書いたものを見せてご提案したところ、気に入っていただきマッチングが成立して、このプロジェクトが始まりました。
「くつしたいつ」はその名のとおり、靴下とタイツを組み合わせて履くことが特徴の商品。そこを掘り下げていくことで、今のものとはまた違った売り方ができる商品になるのではないかと思いました。「組み合わせる」が特徴なら組み合わせることを楽しめる商品に。そうすることで、集めることが楽しくなり、結果リピートにつながるのではないかと。
時代的にSNSも意識しました。思わず写真をアップしたくなるようなものだとSNSを通して目にする方も増えますよね。価格勝負ではない商品だからこそ、口コミで伝わって広まり、こういうテイストのものが好きな方の目にとまって売れる方が、ファンになってもらえてリピート購入につながるので、結果的には良いんじゃないかということは、沖さんにも共感していただけました。
商品のターゲットは1歳頃の歩き始めた子供を持つママ。子供に履かせるものなので、子供も好きになってくれるようなカラフルで、かわいいものって何かなと考えた時に「アイスクリーム」がいいなと思って。かわいい子供の脚をアイスクリームに見立てて、タイツがコーン、靴下がアイスクリームのような感じ。靴下の名前もチョコチップやマーブルのようなアイスクリームを思わせるネーミングにして、フレーバーを選ぶように靴下を選ぶ楽しさを感じてもらえる商品としてご提案しました。そうすると、この商品の世界観としては「架空のアイスクリームショップ」だろうな、ということで、ブランド名をManma icecream houseと冠して、売り出すことに決定しました。
パッケージにもこだわりました。百貨店やセレクトショップなど、様々なお店に置くことを想定すると、商品そのものがディスプレイとして役割を果たし、かつどんな商品なのかが一目で伝わるようなものがいいのではないかと考え、商品のカラーが引き立つ茶色をベースカラーにし、そこにアイスクリームの形の窓をあけて商品を見せて「アイスクリームをコンセプトにした商品」であることが伝わる、陳列することで様々なアイスクリームで売り場が華やかになるようなデザインに決定しました。表面には当初からイメージしていた「子どもの手」のイラストを自身で描き入れていたのですが、裏面にはブランドの世界観を表現したイラストを入れたいと思い、弊社のイラストレーターである野村に声をかけ、描いてもらいました。オーダーしたテーマは「ポップでレトロな海外のアイスクリーム屋さん」。出来上がったイラストは、私の頭の中にあるイメージを取り出したうえで、さらに磨きをかけてもらったような、ブランドの世界観を表現したものになりました。
商品の完成後は、「暮らしにいいモノプロジェクト」の一環で、日本最大規模で開催される見本市であるギフトショーに出展。また、2019年のひろしまグッドデザイン賞でパッケージ部門の奨励賞を受賞することができました。商品のビジュアル的なコンセプトをしっかり立てているので、人に説明しやすい商品になりました。「アイスクリームみたいなカワイイ靴下」という風に、一言で説明できる商品はマーケティング的にも伝播しやすく、分かってもらいやすいので、コンセプトがはまるところには共感していただけるはずです。今回は、商品のコンセプト作り、商品デザイン、ロゴ、パッケージ、名刺、パンフレット、展示会に使うポスター等、一通り任せていただいたので、それらを持ってどこまで世の中に広まるか、今後の展開が楽しみです。
私たちライツ・ラボは今年で100周年を迎えた印刷会社、株式会社中本本店の中にあるクリエイティブチームです。立ち上げて丸一年ですが、今回の事例のような「デザイン」にとどまらず、もっと根っこの部分からご一緒に考えるような案件の依頼をいただく事が増えています。また、自社の取り組み「ひろしま食べる通信」の運営を軸に、新しいつながりが全国規模で生まれてきています。なにより、ライツ・ラボには私のようなデザイナーの他にも、ディレクター、コピーライター、イラストレーター、編集者、ライター、Webエンジニア等様々な職種のクリエーターが所属しているので、社内ですべて一体で完結できるのは特徴であり、強みです。とはいえ、まだまだ印刷会社というイメージが強く、紙ものの制作を中心としたお仕事が多いですが、今後もこれまでやったことのない企画やものづくりにもチャレンジしていきたいです。
デザイナーと言うとまだまだ「見た目を美しくする」ことをやる人だと思われることが多いのですが、私たちの仕事は外側の見た目だけでなく、そのものの本質が「正しく伝わる」デザインをお客様と共に作り上げること、その時初めて自分たちの存在意義が発揮できるんじゃないかなと思います。もっと自分たちにしかできないことを、自分たちが求めているだけではなく、外から求められるような仕事を着実にやっていくことが、目指す未来につながると思っているので、そこを目指してチーム全員で走り続けたいと思います。言われたことだけをやる、受注産業だけだともう先がない時代。だからこそ、相談されるような関係づくりを大事にしていきたいですね。
グラフィック、ウェブ、動画、ロゴ、パッケージ、広報、販促など、専門スキルを持つメンバーが、モノづくりの企画段階から対話を重ねながら伴走します。
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