事例 柳井ブランド
柳井ブランドとは、柳井市の特産品を群としてPRすることで、柳井市自体の価値を上げていこうという取り組みです。認定される商品には、一次産業はじめ加工品など様々ですが、金魚ちょうちん・柳井縞・自然薯・甘露醤油という大きな4つの特産品プラス、それを押し上げるような商品を合わせて、柳井ブランドとしています。元々制度自体は市として立ち上げられていて、初回のパンフレットは市役所の中で独自に作られていたようです。今回手掛けたパンフレットは柳井ブランドとしては4回目の取り組みでしたが、私たちは2回目から関わらせてもらっています。以前から柳井市の観光ガイドや、特産品である金魚ちょうちんのTシャツデザインの仕事をさせていただいていた流れで、柳井ブランドの案件もご依頼いただきました。
2回目、3回目の制作の際は、掲載する情報と写真を支給されて、デザイン的にインパクトのあるものを考えて制作物を作りましたが、今回の依頼は前のものと明確に違っていたんです。商品をカタログ的に紹介するのではなく、作り手や、商品の背景に焦点を当てた、ストーリーのある冊子を作りたいから、取材を一つ一つ丁寧に行ってパンフレットにしたいという要望でした。そこで、撮影はプロのカメラマンに入ってもらい、私たちで取材、文章、デザインを担当しました。やりたいことに対して、私たちが骨組みを作り、そこに少しずつ肉付けをしていくイメージですね。
表紙のメインビジュアルは柳井の特産品である、金魚ちょうちん。地元の人にしてみたらまた金魚ちょうちんかと思われるかもしれませんが、柳井を語る時には欠かせないものなんですよね。ならばとびきり綺麗に見せようということで、真正面からガシッと強い感じで、こだわって撮影してもらいました。ザ・柳井というインパクトのあるビジュアルになっています。
パンフレットの全体的なコンセプトとしては、柳井のブランド自体の歴史や重みを意識したものにしています。書体や文字のバランス、余白を活かしたページ構成で、品質の良さを感じさせること、飾り立てるのではなくシンプルに見せることで商品自体を引き立たせる工夫をしました。また、なるべく手元が写っている写真を使用することで、手作りで丁寧に作られていることを伝えています。
約20社の事業者さんの取材をして、約1年の時間をかけて完成したこちらのパンフレットですが、当初は制作予算が厳しい状況でした。そこを工夫して、プロのカメラマンによる撮影写真はすべて事業者さんに譲渡することで協賛を得てパンフレットが出来上がっています。また、この案件の担当者である柳井市役所の宮田さんはじめ、柳井市の方々との信頼関係もこのパンフレット制作には欠かせませんでした。言ってみれば、柳井市全体で作り上げた、思いのこもった1冊なんですよね。だから私たちも、作るからには掲載企業のイメージをアップすることと同時に、売上も3-5%程度アップすることを目的としていました。単に商品を綺麗に見せるのではなく、その裏にある思いと、歴史の深みや重みを写真、文章、デザインで伝わるように試行錯誤しながら作り上げたパンフレットは、柳井市側、事業者側の方々からも評価をいただきました。
根本的な課題としては、魅力ある商品を通じて柳井市の観光に結びつけることなので、元々は外へ発信する目的で作っていますが、柳井ブランド自体、市民の方にもあまり知られていない状況だったので、まずは柳井市民の方にブランドをしっかり知っていただくということも含めて、市内の施設にも配布されています。私たち自身、今回取材で回らせていただいて改めて商品の成り立ちなどを聞かせてもらう中で、柳井のものづくりの素晴らしを感じています。このパンフレットを通じて、柳井に住んでいることの喜びや誇りを持っていただく事ができれば、こんな幸せな仕事はないですね。
NIKUJAGAとして柳井を拠点に仕事をするようになって約20年。元々は東京の広告プロダクションで私はコピーライター、妻がデザイナーとして働いていました。Uターンで柳井に戻ってからはグラフィックデザインのお仕事を中心に、今回のようなパンフレットやチラシなどの制作をメインにしています。柳井市は人口3万人程度の小さい町なので、横のつながりでご依頼いただく事が多いですね。この町は、豊かな資源や恵まれた風土がありますが、あまり上手に発信ができていないと思うんです。そういう問題を解決する企画や表現をすることがうちの特色。今後もクライアントの魅力をきちんと発信できるよう、コンサル的なクリエイティブワークを追求していきたいと思います。
流通・ファッション業界から航空会社・テレビ局まで幅広いジャンルのクライアントを担当し、企業広告を手掛けてきた経験とノウハウを活かした企画・表現を実践しています。
山口県柳井市