事例 八重製材所カタログ
八重製材所の社長の波多野さんとは、施工例を撮影されているカメラマンさんからの紹介でお会いしました。施工例のきれいな写真のストックがたくさんあるのでこれを活用して、カタログを作りたいと思われていた時だったようです。波多野さんは、車やバイク、ラジコンなどが大好きな、いわゆる趣味人です。僕もその分野は好きな方なので、カメラマンさんから多分気が合うと思うからと紹介していただきました。
お話してみて、ホビー関係でやはり話が盛り上がりましたね(笑)。そこからすぐにカタログをお願いしますと依頼をいただき、カタログ制作を進めることになりました。
施工事例をお客様に見せていく何かいい方法がないかというご相談だったので、普通のパンフレットとは違う、写真を大きく迫力のある見せ方ができる、タブロイド判でのカタログ制作を提案しました。
きれいな写真素材がたくさんあったので、冊子の表も裏も表紙のような両A面にして、どちらから読み進めても違和感のない雑誌のような構成にしました。真ん中のページで家の図面がバンと出る見せ方で作っていて、写真の良さやタブロイドで見せる迫力を実感してもらえたと思います。
冊子制作の際に、会社のロゴマークと封筒などの販促ツールも合わせて制作しました。ロゴは会社にとって大事な顔になるものですよね。八重製材所さんは元々製材屋さんだったという会社の歴史から、木材を製材して組み上げていくことで家になる様子をタイポグラフィーで表現しています。
カタログは継続して発行する方針で、現在は3号まで出しています。2号を作る時に、波多野社長のページを作ろうという提案をしました。というのも、八重製材所のコンセプトが「住むを楽しもう」なんです。これを体現しているのがまさに波多野さん。社長自身が仕事や趣味をどんどん発信していくページを作ることで「楽しそうな社長が作っている家だったら、絶対に楽しい家が作れるはず」というイメージを持たせましょうと提案しました。
波多野社長のページを作ってからは、波多野さんと似たような趣味の方がショールームに来られるようになりました。そういう方は来てもらってショールームをご覧いただいてから契約までが速いそうです。楽しいに共感するパワーはあるんだなと実感しています。
注文住宅のラインナップとしては元々2ブランドあります。その一つが「ワン・オフ」というラフな印象を持たせた無塗装の家のシリーズ。タブロイド判でその実績をアピールして押し出すことで、現在は主力商品となりました。冊子に使う写真にはなるべく人の匂いがする写真を、というオーダーで撮影してもらっています。人が入ることでリアリティというか、写真の温度が全然違うんですよね。一般的な建築写真だと、家ができた直後の家具も入れていない空間の写真が多いのですが、八重製材所はそれとは真反対の方向性です。完成した時点では未完成なんだけど、そこから自分の好きなものを入れたり、逆に削ったりして、個性という色を付けることで家は完成するから面白いんですよね。
波多野さんがデザインに対する理解がものすごくあったということももちろんですが、波多野さん個人のユニークな趣味の活動を前面に出すことで、それに共感する方が集まってくれて、結果的に企業ブランドの向上に結びついた面白い案件だったと思います。
現在、波多野さんはYouTubeで趣味について発信されていて、チャンネル登録数が6000人超えと、結構なボリュームになっているそうです。個人の趣味であっても手を抜かず徹底的にされるのも波多野さん流です。趣味のオリジナルグッズ制作もお手伝いしているのですが、企業のそれと同じトーン&マナーを守ってクオリティの高いものを作っています。
今回のような住宅の案件は初めてでしたが、業種も会社の規模も様々なお仕事をさせていただいています。僕の仕事は、ロゴの制作や紙媒体のグラフィックデザインが中心ですが、お客様の求めているものや、質みたいなものを、きれいにして返してあげることだと思っています。たくさん盛ってデザインするのではなくて、そぎ落として本当に伝えたいことだけをまとめてきれいに見せる、引き算のデザインを心がけています。
手を動かして制作をすることが好きなので、アートディレクションも含めてデザインの作業自体は基本的には一人で行っています。大きな案件になるとチームでやることもありますね。現在、モデル事務所の専属デザイナーも兼務しているので、モデルさんがもっと活躍できる媒体作りなどもやっていきたいです。
grab.という社名は英語の「掴む」という意味です。これからも人の心を掴むデザインをしたいと思っています。
アートディレクションやグラフィックデザイン、イラストレーションを通じて、クライアントの意向に寄り添い、意見を交わしながら、さらに驚きと上質なツールのご提案をさせていただきます。
広島市安佐南区