事例 縄文あいすパッケージ
デザインの仕事は30年位やっていて、グラフィック、印刷、造形など自分の中には特に壁がなく、できることは何でもやるというスタンスです。80~90年代は看板や大きな壁画も描きました。その後、大きなペイント作業をするための作業部屋として倉庫を友人とシェアする形で借りていました。その倉庫ではある時期、花屋や洋服屋をしている友人達それぞれと3つのショップをすることになり、私は古道具とアート作品などの販売をしながらデザインの仕事もしていました。その時に出会ったお客様の中にひとはの代表の方がいらっしゃいました。ショップの雰囲気と作品などを気に入ってくださり何度か足を運んでくださっていました。そのうちにアイスクリームの商品開発をしているから、パッケージをお願いしようかなという話になりました。お店の雰囲気で私がどんなデザインをする人間なのか説明しなくても伝わるので、頼んでいただけたのだと思います。
依頼を受けた時は、まだ商品は開発途中でしたが、使う素材は古代米である「黒米」を使ったもので、商品名は「縄文あいす」と決まっていました。一番の売りは安芸高田市向原町で栽培している古代米を使用していることだったので、いにしえ感を出したいという思いを込めたネーミングだったそうです。縄文らしさを表現するために、原始的な方法でデザインするのがいいなと思い、アイスのイラストを描くのに割りばしを使いました。割りばしを削って墨を付けて描いたので、筆で描くきれいな線とは違い、自然なラインが表現できたと思います。
なにより一番は、技術的なことよりも、そこで働かれている方々の純粋さだったり、素朴さみたいなものを表現することを心がけて制作しました。
商品は安芸高田市のひとはさんのお店や、道の駅などに置かれています。オンラインでも販売されているようです。嬉しいことに、2005年にこの商品が発売されてから今でもコンスタントに注文が入っているとのこと。私もいろんな人にあのアイス食べたことがあるよと聞くので嬉しいですね。
その後もいろんな商品のお仕事をいただいていて、今もいいお付き合いができています。ひとはさんは福祉施設なので、大企業と違い、作るものにも予算にも限りがあります。予算がない時ある時に関わらず協力できるといいなと思いますね。現在の担当はひとはの常冨さんです。現在も新しい商品のデザインなどの相談を受けて一緒にやっています。
こういったパッケージなどのグラフィックのお仕事もありますが、今は舞台美術やワークショップ関係のお仕事が多いです。共通しているのが、大きな企業さんの宣伝物を作るというより、個人やお店で規模は小さいけれど意欲を持って活動されている方のヘルプをするということ。お店のオーナーや舞台の演出家など、何かを発信したり、表現しようとされている方の想いを目に見える世界として作り上げるのが私の役割だと思っています。イメージ的なものを言葉や視覚、空間で伝えるお手伝いです。
若いころからパペット・舞台・デザイン製作と並行して、古道具屋の主でもあります。良いものは良いというコンセプトで時代、所は問わずデザイン、色彩、質感が優れている古道具などに惹かれ、蚤の市にも携わってきました。お客様からご依頼の仕事と自分発信のアーティストとしての活動を両方やっています。アーティスト活動では、映像・影絵・踊り・音などを用いた「動」をテーマにしたパフォーマンスから、絵・オブジェ・言葉といった「静」的なもの表現する活動を行なっていて、「動と静」2つの側面から世の中の人々に向けて「生きる」をテーマに発信しています。
人間はいつか絶対になくなりますよね。生きていること自体が何かを生み出すことはしなくても、なくなるその日まで、日々細胞は動いて生産されていく。そう考えると、どんな生物も生きていくことが本当に芸術のような気がするんです。みんな日々食べることだとか、やらないといけないことに追われていて、自分がアートだと気がついていないかも?心がウキウキするのは自由なのでもっとせっかく生きているこの時間を楽しんでほしいと思います。そう!!生きていることは、みんな一人一人すごいこと。生きているだけでアートだと思っています。それを伝えるために、私はこういう表現の仕事をしているような気がします。
会社の大小があっても、根底には自社の商品なりサービスなりを使ってもらったら、きっと何かを良くすることができると思って事業をされているはず。その奥にある、温かいものをどういう表現で伝えるかが、私の仕事だと思っています。これまではそういうデザインも美術もすべて一人でやってきましたが、これからは私の得意としている雰囲気を絵にしたり、空間を作ったりという部分に力を入れるためにも、グラフィックなどの見せ方の部分などは、他のデザイナーの方に協力してもらいながらお仕事ができればいいですね。
表現するということが、時には仕事になり、時には人に自分の考えを伝えるための手段になっています。大げさな言い方かもしれませんが、最終的には関わった人たちが生きていてよかったと思える手助けができたらと思います。
モノ・コト・ヒトの物語をカタチに。
イラスト・オブジェ・空間デザイン、舞台、人形劇、影絵劇パフォーマンスの美術、アニメーション・コドモの遊びワークなど。想像を創造する、お手伝いです。
広島市安佐南区毘沙門台2-16-30