事例 iroherb(イロハーブ)
iroherb(イロハーブ)は山口県岩国市の由宇町にある、カフェやインテリアショップ、グリーンショップなどを併設した複合施設です。こちらを運営しているのがネストハウスさんという工務店で、以前よりホームページの仕事をさせていただいておりました。ネストハウスの石川社長が「ホームページは3年に1回はリニューアルして古く見えないようにしたい」というお考えで、これまで2回リニューアルをお手伝いさせていただいております。
ネストハウスさんがなぜこのような複合施設を始められたのか、単純に言うと「会社の生き残り」を考えられてのことでした。少子高齢化が進む中、どうやって生き残っていくか。その選択肢の一つがiroherbだったそうです。メーカーにはない、工務店にしかできないことをやろうということで、このプロジェクトがスタートしました。長崎県にも工務店さんが複合施設を作って集客に成功している事例があるそうで、地域や市場は違いますが、これをモデルケースに、独自のコンセプトを考えられていました。
iroherb設立は、複合施設の建築と運営をするという一大プロジェクトだったので、自分たちだけでこれほどの施設を作ることは難しいと判断されていました。そこで、設計事務所や造園会社さんに入ってもらったり、インテリアコーディネータ、フードコーディネータの方など、お付き合いのある企業さんにお声がけされていました。その中でデザインやビジュアル面で協力してくれるところを探されていて。元々ホームページ制作でのつながりもあったので、ロゴを含めた全体のVI(ビジュアル・アイデンティティ※)とアートディレクション(※)を担当させていただく事になりました。
※VI(ビジュアル・アイデンティティ)
企業の象徴となるシンボルマークやロゴタイプといった視覚(ビジュアル)の統一をしようという計画のこと。
※アートディレクション
視覚表現手段を計画し、総括、監督すること。企画からプレゼン、撮影、デザインなど制作全般における品質管理を行う。
私たちが入った時は、ある程度こういうコンセプトで行くことは大まかには決まっていましたが、iroherbという名前や具体的なことは何も決まっていませんでした。ものを作る前の段階の方が長かったような気がしますが、最初は何回もミーティングしましたね。ネストハウスさんがこの施設を通して、どのようなことを考えられているかのヒアリングも時間をかけました。大きな模造紙に、1年後、3年後、5年後、10年後、ここがどうなっていたいのかを聞きながら書き出して、その時そうなるために今どうしたらいいのかを整理するようなワークショップもしましたね。頭で思っていることを言葉で書き出すことで、導き出した想いや方向性を共有することができましたし、そのあとの制作もスムーズに進みました。
iroherbという名前は「いろは」と「ハーブ」を合わせた造語ですが、コンセプトにもあるように、暮らしがより豊かに彩られるような、いろはを提案するという意味が込められています。その後、ロゴマークを何案かご提案して全員一致で決定しました。
ロゴマークの他に、コンセプトを連想させるようなアイコン的なものがあったらいいんじゃないかと思い、ロゴとは別のイラストレーションも制作しました。住宅もそうですが、こういう施設のメインターゲットはやはり女性。iroherbに入っているものを柔らかいタッチで描き、コンセプトを伝えています。ロゴとコンセプトイラストが固まってからは、ショップやカフェで使うような紙袋から箸袋まで必要なツールを作っていきました。
iroherbのある由宇町は、畑や山に囲まれた自然豊かな田舎町なので、こういう施設を作っても、通りがかりのお客様自体がそんなに多くない。とはいえ宣伝するといっても、まだできていない段階でいきなり宣伝するようなこともできない。ネストハウスさんは、住宅の完成見学会などのイベントをされる機会が多いので、そういう時に告知できるような小さなコンセプトブックを作りました。内容ははっきりうたわずに、2014年OPENということと、なんとなくカフェがあって雑貨屋があるということを掲載して施主さんやお客様に配ってもらいました。それでもやはり最初は集客が大変だっと思いますね。
オープン後は、方向性や中身も決まった内容でコンセプトブックを作り直しました。
ここが始まる前は本当に何もない更地でした。その状態から、これだけの施設を作られているということはすごいこと。ネストハウスさんの本社もここに移転されましたが、社員に良い環境を提供したいという石川社長の思いもあったそうです。施設内にたくさん木を植えられていますが、この地域の山の木を植えてみて、ここの環境に合うかどうかをみて、合うものだけを植えるという徹底ぶり。
着実にお客様も増えていて、来られるお客様がこの施設でお茶をしたり、家具を見たりすることで、こんな暮らしがあったらいいなと家の相談につながることもあるそうです。そしてこの取り組みが2017年度のグッドデザイン賞受賞という形でも評価されています。また新たな試みも計画されているそうなので、まだまだ進化していかれると思いますね。
EDGE!は関連会社であるTSUSHIMA DESIGNのウェブ制作部門というスタンスですが、今回は全体のアートディレクションという形でお受けして、方向性の部分や具体的な制作物、施設内の看板やサイン計画など、すべてに関わらせていただきました。結果的にはコンサルティングのようなこともしています。お客様がやりたいことを実現するためのサポートをすることが私たちの役割なので、それも制作する上では必要なことだと思っています。
今回の案件も、新しいものを作るというところに入らせてもらったのですが、今後も、そういうゼロから作るようなお仕事ができたらと思っています。やはりゼロから一緒に考えて作っていくということは、あるものの見せ方を変えてつくるのとは違う面白さがあります。私たちができることはデザインすること。ビジュアルを通して、お客様の思いを伝えていきたいと思います。
ホームページの企画・デザイン・運営管理をはじめ、企業のロゴ・パンフレットやパッケージなどのデザインを手がけます。対馬デザインの関連会社。
広島市南区松川町1-17 松川ハイツ204