事例 ラーメンカフェ ピッグボーン
今回お手伝いさせてもらったのは「PIG BONE」というラーメンカフェです。店名の通り、「とんこつ」ということなのですが、今回このお店を立ち上げる時に、新しい居酒屋をオープンするので図面を描いてもらえないかということでクライアントから相談がありました。行ってみるとクライアントの娘さんはカフェをやりたいとおっしゃって(笑)。世羅のその場所は30年続いたラーメン屋さんだったみたいです。それを見たとき、僕はラーメンでカフェ?と最初は戸惑いましたが、娘さんは新しいスタイルでカフェをやりたいという希望をお持ちでした。
そこで、世羅という土地柄を活かしながら広島や福山の女性客をターゲットにして週末に集まるようなカフェにしましょうと提案したら、お母さんがラーメンの豚骨スープをずっととっているから、母親のためにラーメン屋は外せないと言われ、そうなるとラーメン居酒屋カフェ?とか家族の中で意見が飛び交っていましたね。
1年に渡って、家族の意見がまとまらなくて(笑)、その間に僕がはいって色々と整理していきました。
この店には、家族の思いというものが入っているので、ご家族の意見を一番に考えていますが、1つだけ僕がやらせてもらったのは厨房とお客さんの目線が通るようにしたところです。本来は区分すべきだと思うんですが、みなさんと話しているとき、近所の方たちとの接点として顔が見えるというところを重視しました。長男さんの、店の前に木が生えているけどこうした木も生かしたいという意見なども取り入れながら、そういう意見をうまく集約していく役目が私の役目だと思っています。
店舗を手がけるときは僕も一緒にどんどん現場に入っていきます。
今回も看板など娘さんと一緒につくったり自分達で壁も塗ったりしました。店舗っていうのは作るまでのコンセンプト、事業計画、家族愛だとか全部必要なんです。スタートしたら半年、1年、2年、3年、5年、と続けていくために僕らも責任持ってつきあっていかなければなりません。デザイン会社というのは、一ついい作品を作ったから終わりじゃなくて、長くみなさんに支持してもらえるような何十年と続く店舗を作ったほうがいいと思っています。だからクライアントとも長くお付き合いしていくことが大切だと思っています。
僕は店舗を作るときにクライアントの気持ちを一番に思ってしまうので、自分のデザインとしてはこうしたかったと思っていても、クライアントの意思を優先することもあります。そのやりとりが楽しかったりもするんですけどね。それが一緒に作るという僕のスタイルです。
ここをどう仕上げたいというクライアントの気持ちを表すのは、クライアントが自分でこうやってほしい、というのを実際に現場で一緒にやってみるのが一番だと思います。確かに、仕上がり感や仕上げ感が必要な店舗もありますが。きれいに仕上げることだけが仕事じゃないと思っています。
自分は建築としてのフィールドもあるから、現場で職人さんとやりとりしていくことができます。図面やパソコンだけの世界だけではなく、現場に踏み込んだり、付加価値をつけたりという気持ちで取り組んでいます。なんでも一緒にやりたい性分なので(笑)。
最近、何屋さんなの?何が主な仕事?ってきかれることが多いんです。確かに色々なことをやっていますが、共通している部分はデザインに関連するサービスというところです。どんな相談でもクライアントに対して提供できることは一歩踏み出して頭を突っ込んでいくようにしています。
僕は三原で生まれて学生時代は東京にいたのですが、戻ってきて主に建築デザインをしています。
三原ではデザインに関わる仕事をしている人がほとんどいないので、あまり予算のない広告などは、印刷会社が1枚いくらで印刷しています。デザイン費という項目が存在していなくて、印刷代に入っているんですよね。「名刺作ってよ」と言われて、デザイン費に諸費用が掛かりますよって言うと「おたくらはプロなんだから簡単にできるんじゃないの?」と言われることがいまだにあります。デザインにはきちんとお金がかかるということを、今もまだ言い続けなければなりません。最初にデザイン費という名目で見積書に記載したのは三原では僕の事務所が最初だと思います。最近では、徐々に広告代理店やデザイン事務所に勤めていた30代の方が三原に帰ってきて仕事を始めるようになってきました。やっぱりそういう若い人達がいる街でないといい雰囲気にはならないんじゃないかと思います。だから自分の事務所がどうなっていきたいというよりは、デザインでちゃんとお金がいただけるような街になってもらいたいと僕自身は思っています。
グラフィックデザイン・エディトリアルデザイン・アーキテクトデザインを主にしているTotal supportの事務所です。
広島県三原市宮浦6-30-1