2月10日に広島市工業技術センターに原田祐馬さんをお招きしてセミナーを開催しました。当日は広島や近隣エリアのデザイナーや経営者を中心に約40名が参加。現地開催ということもあり、参加者同士の交流も見られました。
今回のテーマは「対話から生まれるデザイン」。原田さん自身の生い立ちや携わっているプロジェクト、デザインに対する考え方など幅広くお話いただきました。
原田祐馬
UMA/design farm 代表 アートディレクター/デザイナー
1979年大阪生まれ。京都精華大学芸術学部デザイン学科建築専攻卒業。名古屋芸術大学特別客員教授。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。
プロジェクトを進める時には、「プロセスから作る」という原田さん。人やモノと対話をしていく過程で、新たな疑問ややるべき事が生まれる。その積み重ねがアウトプットに繋がっていくのだとか。
「福岡県の福知町で、図書館の立ち上げに携わったことがあります。その際には、まず“どういう図書館があると良いか”を地元の中学生とディスカッションをしました。図書館を作るまでのプロセス自体を作り、過程の様子も情報発信をしていく。その中でどういう建築が良いかを考え、設計に落としていきました。」(原田)
そして最近では、既に世の中で広く知られた商品やサービスのブラッシュアップよりも“ちいさく、よわく、とおい”存在やモノとのプロジェクトが増えているという。
「社会で既に目立っているデザインのブラッシュアップよりも、まだ社会で見えていない人たちのものをデザインすることが増えています。対話をしながら作り上げていき、自分たちがやっていることで少しでも社会が良くなったら良いと思いながら活動をしています。」(原田)
プロセスの中で吸収をしたものをデザインに落とし込んでいく。過程の中にある「対話」を大切にしているからこそ出来上がるものがあります。原田さんが関わった小豆島の芸術祭「アート小豆島・豊島2014」もその一つです。
「私が最初にフィールドワークで現地に訪れた際に、現地の人と話していく中で『島の定期便が無くならないようにしたい。』という話を聞きました。そこで気付いたんです。芸術祭に来たお客さんのためだけではなくて、開催をする場所の人たちのためにどうやったらクリエイティブが役に立つのか。それを考えていく必要があるのではと。そこで、『一回行けば終わり』ではなく、訪れた後も何度も島へ行きたくなるような芸術祭にすれば定期便にも繋がると思い。『何度も行きたくなるような場所にする』を目的にして、芸術祭の中で様々なプロジェクトを作り上げていきました。」(原田)
観光案内所の改装をし「クリエイターズレジデンス」に、町中で演劇をするというプログラムを企画。新しい盆踊りを作った「みなと祭り」は現在も継続して行われているとのこと。出会った人たちの気持ちに触れ、対話をしながらデザインをする。一度行って満足する観光ではなく、現地との新しいつながりを生み出す「関係」ができる芸術祭は、そのようなプロセスがあったからこそでした。
当日は他にも、「たんぽぽの家」のプロジェクトや広島の「砂谷牛乳」のデザインの話など、様々な事例についてお話しいただきました。セミナーの最後に設けた質問コーナーでは、原田さんの幼少期のお話や、特別客員教授をしている大学の講義のについてなど、幅広い内容を伺うことができました。
と、つくるを運営する広島市産業振興センターではデザインマネジメントセミナーはじめ、複数のセミナーを毎年開催しています。セミナー情報については、当サイトやフェイスブックページで随時お知らせします。