事例 KELLY'S KITCHEN
ケリーズキッチンさんは、2023年にスタートした『鹿肉』と『ハーブ』に特化したペットフードブランドです。代表の徳満さんが事業を始めたきっかけは、愛犬の存在でした。重度のアレルギー体質で食べられるものが限られていた中、草食動物である鹿の肉はアレルギーに抵触せず、体にも良いことを知ったといいます。実際に、鹿肉は栄養価が高く、アスリートにも好んで食べられているヘルシーな食材のひとつでもあります。
また今、社会問題であるイノシシやシカによる獣害被害。ここ広島でも被害は深刻で、駆除された個体の多くは焼却処分されている現実があります。しかしその一方で、ジビエである鹿肉は高値で取引されているという矛盾も存在しているといいます。この矛盾を有効活用し、駆除された鹿肉でペットフード事業ができないかと考え、広島市へ相談。中山間地域好循環創出支援事業に採択され、事業をスタートされました。
徳満さんとは、ご主人の会社と弊社がお取引があり、そのつながりで「ブランドロゴを作りたい」とご相談いただいたのが始まりです。商品は公式オンラインショップやイベント出店を中心に販売されていますが、広島土産としての展開や、ふるさと納税への申請などの話も進み、「いよいよ本格販売へ」という段階になり、広島土産としてもインパクトのあるパッケージを作りたいというご依頼をいただきました。初めてアトリエを訪れた時、骨、心臓、背筋、胃の内容物の草など、普段目にすることのない部位ばかりで、驚きと共に、興味深く、商品自体の力強さに深い印象を受けました。
大切にされているのは「鹿を余すことなく使う」こと。人間用に解体された残りを使うのではなく、一頭丸ごとを犬のために活用します。通常は廃棄される内臓や目、脳、さらには胎内にいた個体まで、自然由来の貴重なオーガニック食材として使い切る姿勢を貫かれています。
打ち合わせでは、まずブランドのコンセプトについて丁寧にお話を伺いました。「鹿を余すことなく使うこと」「それによって犬が元気になること」。そうした要素をビジュアル化し、ケリーズキッチンの『K』をモチーフにした、鹿の角にハーブが巻きついたシンプルなロゴデザインが完成しました。添加物を使わず、自然素材のみで作っている背景を、ストレートに表現できていると気に入っていただきました。
また、商品パッケージには、ロゴとは別に、ハーブの角が生えた躍動感のある鹿のグラフィックを描いています。周囲には生命力があふれるような光のモチーフを加え、食べることで元気になるストーリーを込めました。パッケージは商品ごとの表記と、広島土産も意識した『HIROSHIMA』の表記を加え、色違いのパターンを用意しました。背景色は自然を感じさせるアースカラーでトーンを抑え、グラフィックは補色関係を用いた原色で、光り輝く生命力を表現するために、コントラストの強い配色にしています。
完成したロゴは、名刺やパッケージ帯として印刷物へと展開します。自社で用紙選定から印刷まで一貫して行えることは、私たちの大きな強みです。名刺の用紙は、自然素材を扱うブランドの世界観を表現するため、砂の岩をイメージした、ざらりとした質感のエンボス紙である『サガン』の黄色をセレクトしました。ブランドカラーとしても黄色は定着しています。パッケージにも名刺と同じ『サガン』を採用し、グラフィックの鮮やかさが最大限に引き立つようにしています。白にもさまざまな種類がありますが、下地の影響を受けず純度の高い発色が得られる白を選定しています。
また、豊かな色再現が可能な印刷機「HP Indigo 7K」(※)を自社保有しているため、色味の調整まで細やかに対応でき、満足度の高い仕上がりとなりました。私たちにとって、デザインは完成ではありません。印刷物として形になったときが、本当の完成だと思っています。紙質や印刷調整まで含めて表現を追求できることこそが、印刷会社の強みだと考えています。
※HP Indigo 7K:商業印刷用の高品質デジタルオフセット印刷機
徳満さんからは、イベント出店を重ねる中で、顧客も着実に増えていると聞いています。パッケージの紙がかわいいからと、捨てずに保管してくださる方もいると聞き、大変嬉しく思っています。私が制作にあたって大切にしていることの一つが、お客様の『温度感』を感じ取ること。打ち合わせでは、やりたいことの事実確認だけでなく、余談も含めてできるだけ多くのお話を聞かせていただくよう心がけています。徳満さんは、非常に熱量の高い方なので、すべての犬の健康を支えたいという探究心が、このブランドを形づくっているのだなと感じますね。
今後は、愛犬の体調や年齢、体質に合わせたオーダーメードの定期便も構想中とのこと。それに伴い、ウェブサイトの刷新も検討しています。「食事は一度きりではなく、続けることで効果が出るもの。だからこそ長期的な関係性を大切にしたい」と話す徳満さん。その想いに寄り添いながら、変化し続ける取り組みを支え、良き理解者であり、提案者であり、いつでも気軽に相談していただけるパートナーでありたいです。
中本本店は、創業100年以上の歴史を持つ印刷会社です。私はクリエイティブ部門「LIGHTS LAB」に所属し、アートディレクター兼デザイナーとして関わっています。
制作の中で重視しているのは、目に見える情報だけでなく、その背景にある文脈や関係性を読み取り、編集し、かたちにすることです。パッケージやツールが単なる装飾ではなく、意味を持って伝わる状態を目指しています。
印刷会社という環境にいるからこそ、紙や加工、仕上がりまでを含めて設計できることも強みのひとつです。これからも、対象の持つ魅力や背景を丁寧にすくい上げながら、伝わるかたちへと落とし込んでいきたいと考えています。
グラフィック、ウェブ、動画、ロゴ、パッケージ、広報、販促など、専門スキルを持つメンバーが、モノづくりの企画段階から対話を重ねながら伴走します。
広島市中区東白島町13-15