事例 ミナモア ロゴ
2025年3月、広島駅直結の商業施設として開業した「ミナモア」。今もなお、広島駅の再開発が進んでいますが、ekieに続き、広島の新しい玄関口として注目されている駅ビルです。特に、路面電車の駅ビル2階への乗り入れは、世界的に見ても珍しい構造です。運営を担うJR西日本グループの中国SC開発さんは、「地元の方に愛してもらえる駅ビルにしたい」という強い想いを持たれていました。そこで、市民の皆さんに名付け親になってもらおうとネーミングプロジェクトが始まり、誕生したのが『ミナモア』という名前でした。広島駅という場所で、これから10年、20年、そして半世紀と、長く街の核であり続ける施設だからこそ、その名前を象徴するロゴマークには、確かなクオリティが求められます。それと同時に、「地元で長く愛されるものにするなら、やはり広島のデザイナーに託したい」という方針が決まったそうです。その想いを受け、開催されたロゴコンペに、デザイナーの一人として参加したことが、このプロジェクトの始まりでした。
ネーミングが決まり、ロゴコンペが告知されたのは2023年12月のこと。年明け2月にはコンペ本番という、かなりタイトなスケジュールでした。説明会でいただいた分厚い資料と社長のお話を読み解く作業から、ミナモアのコンセプトを理解し、それを体現する造形を考えるのに1ヶ月という時間はあまりに短いものでした。そこで、コンペに集中するために、既存のお客様にお願いをしてスケジュールを調整し、1ヶ月間全力で取り組む決断をしたんです。迎えた公開プレゼンテーションは約100人もの方々が集まる中、トップバッターで登壇しました。緊張する中で、時間も限られた発表でしたが、結果的に僕の案が採用され、大変光栄に思っています。その後、細かな微調整を重ね、2024年6月に公式にロゴが発表となりました。通常、こういった大規模施設のロゴ制作は、広告代理店を介して進められるのが一般的です。今回のように、デザイナーが事業主である中国SC開発さんと直接対話しながら進められるケースは、非常に稀で貴重なこと。担当の伊藤さんが窓口として各所との調整をしてくださったおかげで、制作に打ち込むことができました。
ミナモアを象徴するシンボルマークとロゴタイプ(文字)を制作する上で、大切にしたのは、両者の深い親和性です。その核となっているのが、共通の造形である『M』の形。実はミナモアの施設全体を外から眺めると、中央がくぼんだ非常に横長のM形をしているんです。この建築そのもののシルエットを、そのまま意匠へと落とし込みました。
一番の特徴は、シンボルマークの『M』の下に添えた3本の線です。これは、路面電車が駅ビルの2階へと乗り入れていく、この施設ならではの風景を表現しています。また、ミナモアの語源である『水面』は川の街・広島を象徴する要素。3本の線は、漢字の『川』や、水の流れにも見える造形であり、視点を変えるとミナモアの『ミ』にも見える。バラバラだった要素が、一つの造形として結びついたのは、僕にとっても大きな発見でした。すべての意味がこの形に集約されたとき、「これだ!」という確かな手応えを感じました。
ロゴタイプの方は、文字全体の上部で水面を表現しつつ、『i』や『a』のディテールには、水しぶきが跳ねるような動きを加えました。これにより、施設が持つ躍動感や生命力を感じさせています。駅ビルは、多様な人々を受け入れる場所として、誰もがくつろげる空間であってほしいという願いを込めて、ゆったりとリラックスした空気感をまとった文字に組み上げました。僕にとってミナモアが『みんなが生きるための源』のような場所になってもらいたいという願いも込めています。
造形と並行して、色彩についてもオリジナルのカラー『ミナモアブルー』を提案しました。ロゴの設計を進めるうちに、そのロゴがまるで人格を持っていくような感覚になるのですが、今回のコンセプトを突き詰めていくと、色はブルー以外に考えられませんでした。一口にブルーと言っても、そのニュアンスは無限にあります。理想のトーンを求めて検証を重ね、ようやく辿り着いたのが『ミナモアブルー』です。屋外看板として設置した際の遠くからの視認性や、夜間に照明が灯った時の発色まで、あらゆるシーンを想定して細かく調整を繰り返しました。
ミナモアのロゴが完成した後、屋上広場の名称が『ソラモア広場』に決定したんです。そこでブランディングの統一感を出すために、広場のロゴ制作も任せていただきました。こちらはカタカナ表記にすることでミナモアとの親和性を持たせつつ、太陽に近い場所であることから、暖かく元気なオレンジ色を差し色に加えました。屋上には遊具があり、小さなお子様がのびのびと体を動かせる場所です。よく見ると、文字の一部に「足」のような動きを感じさせるディテールを忍ばせ、遊び心のある意匠に仕上げました。
これほど大規模な施設になると、多種多様な事業者がロゴを扱うため、ロゴ使用のルールなどを記載したマニュアルもあわせて納品しました。誰がロゴを扱っても、ミナモアとしてのブランド価値が損なわれないようにするためには、共通のマニュアルが不可欠です。ロゴはミナモアという人格の「顔」そのもの。確固たるアイデンティティを保ち続けることで、世界観を崩さずに発信していくことができます。また、オープンに際しては、オリジナルのお酒のラベルや、ミナモアを舞台にした小説のブックカバーなど、ロゴが単なるマークを超えて、具体的な形として広がっていくお手伝いができたのは嬉しい経験でした。
ミナモア開発のコンセプトは『広島の人に愛される場所にする』こと。多くの人々が行き交う広島の玄関口だからこそ、ここが皆さんにとって自慢できる、愛される場所であってほしい。広島駅とともに、ミナモアが人々の生活の一部になり、思い出の背景になっていく様を見守っていきたいです。この場所が長く愛されるとともにロゴも一緒に愛され、根付いていくことを願っています。
guideは広島県呉市を拠点とするデザイン事務所です。ロゴを起点としたブランディング全般に深く携わらせていただいています。ここ10〜15年位でメディアのあり方が随分変化しました。SNSの普及により、誰もが自ら発信できる時代になり、地方にいながらもブランド力を持てるようになりました。作り手が直接想いを発信することで、良いものを良い形で消費者へ届けられる時代になったと感じます。僕が仕事を始めた頃は、広告代理店という大きなメディアの柱があり、そこから仕事をいただくのが一般的でした。昔は『良い絵』が描ければそれで良かったのが、今はブランド全体の設計や成長をサポートするなど僕たちの職域自体も大きく拡張しています。ブランドの成功には、伝え方がとても重要ですが、一朝一夕にできるものではありません。長い目で見て、並走し続けることが大切です。僕は、ローカルエリアで熱意を持って活動されている方々と一緒にブランドを育て、デザインでお手伝いしたいと考えています。
お客様の業種・特長に沿ったデザインプランを心がけ、時代性を意識しながらも、普遍的な魅力のあるブランド構築を目指します。
ロゴからパッケージ、商品や企業のリブランディング、店舗サイン、デジタルメディアなどを制作します。
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