事例 有本建設リブランディング
有本建設さんは、岡山の備前を拠点とする、主に木造住宅の設計から工事まで手掛ける昔ながらの工務店さんです。今年で創業58年目を迎えます。有本さんは先代のおじいさまから会社を継がれた2代目の社長です。事業継承した当時、持たれていた課題として、良くも悪くも昔からの古い工務店のイメージが残っていること、備前でも世代交代が進んでいく中で、知名度も下がりつつあることに危機感を感じられていたんです。そこで、古くなっていたウェブサイトをリニューアルしたいと、千日にご依頼いただきました。以前から他の案件でも関わらせてもらっていて、僕がどんなデザインをするかご存じだったということもありますし、僕たちが丁度同い年で、フランクに話ができる関係性も良かったのかなと思います。
ウェブリニューアルに入る前に、有本建設さんが何を重視している会社で、どういう理念で事業をしているのかを、きちんと整理してリブランディングをしていきました。有本建設さんが持っている魅力を100%正しく伝えるには、この作業が一番大切です。有本さんとお話をする中で知ったのが、備前市は岡山県内でも消滅可能性自治体のワースト1位という事実でした。そういう中でも備前という地域で事業をされてきて、企業として地域に還元していきたい、備前をもっと誇れる場所にしたい、という思いも強く感じましたね。
そうして決まった経営理念は、有本さんがずっと大事にされている『好きなんです。人も、木も。』。ブランドコンセプトを『備前を誇る職人集団』と定めました。僕が徹底的に深堀していろんな角度から話を聞くので、ブランドコンセプトを決めるまでに半年~1年程お時間いただきましたが、有本さんの魅力が伝わる言葉になったと思います。
理念とコンセプトを軸に、ロゴとウェブデザインを並行して進めていきました。ロゴの形は有本のAや木をモチーフに、有本建設さんがこれから未来に向かっていく形をイメージしています。見方によって色々連想させてくれる形ですが、おおらかな末広がりの形は縁起の良さや、上に向かって行くという有本さんの強い思いを表現しています。完成したロゴは、ウェブはもちろん、名刺や封筒の他、建設業ならではの工事用の仮囲いなどのグラフィックにも展開しています。
ウェブサイトの方も、『備前を誇る職人集団』が表す、一流の職人感が伝わるような写真・文章・構成・フォントなどを意識して制作しています。先代からのお客様にも配慮しつつ、これからお客様となりえる子育て層が見ても安心して頼みたいと思ってもらえるような、有本建設さんの地域密着の温かさに加えて、洗練感と安心感のあるウェブサイトとなりました。
有本さんに関わらせてもらって4~5年たちますが、去年2023年に、有本さんが新事業として宿泊事業を始められました。きっかけは、事務所の建て替えでした。元々備前には有名な備前焼があるので、少なからず観光客の方々は来ていますし、作家さんが長期滞在する宿泊ニーズもある。そこで、事務所に併設して宿泊という機能をつけたら、ニーズに応えられると有本さんが発想し、『備前ホテル陶』が実現しました。千日では、宿のネーミングから、ロゴデザイン、コンセプトワークやブランディングなどで関わらせていただきました。今ではインバウンドの方含め、観光客の方々も多く来られているそう。ここを拠点に人が集まることで、まちづくりも視野に入れながら展開する企業になりたいとう思いが確実に実ってきています。
有本建設さんのリブランディングとウェブリニューアル、自社で運営する宿泊事業を通して、お客様から高評価をいただいていると同時に、社内でもやるべきことが明確になり、社員さんのモチベーションもアップしているようです。やはり理念やコンセプトをきちんと言語化する大切さを感じますね。
今、有本建設さんは、2年後に迎える60周年に向けて、さらなるブランドの強化や事業展開に向けて取り組まれています。千日としても月1で会議に参加してファシリテーション(※)させてもらいつつ、今後どういう取り組みをするか中長期ロードマップを共有し検討しています。
また、有本さんとは備前ならではの備前建材プロダクトなど取り組んでみたいですね、というようなお話もしています。リブランディングが会社の魅力を伝え、新たな事業展開をする時に背中を推す力となれるよう、今後も伴走していきたいと思っています。
※ファシリテーション
会社や学校など組織の会議などで、議論が円滑に進むよう促すこと。
有本建設さんとは、もう1000日以上のお付き合いをさせていただいていますが、お客様とは長期的なビジョンを共有しながらデザインのサポートをしていきたい、それが千日デザインという社名の由縁です。目に見えるデザインに落とし込む以前に、本質を読み解いて魅力や価値を言語化したり可視化することが、僕たちの仕事だと思っています。
クライアントは大小様々。単発で終わるというよりは、長く関わらせていただくケースが多くなっています。事業主体は中々自分のことを客観的に見られないのが常だからこそ、外部の目で見られる壁打ちの相手はいた方が絶対いい。今後もクライアントの魅力を引き出し、課題を解決するコーチングとデザインを提供していきたいと思っています。
まずは1,000日くらい。長い目でデザインを考えてみる。千日デザインアソシエーションは、クライアントさまに寄り添いながら丁寧でしなやかなデザインを行います。
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