事例 うまがお
吉寅商店さんは島根県浜田市を拠点に、大正初期の時代から食品卸業を営んでいる企業さんです。卸だけではなく、自社商品として浜田の地元で昔から親しまれているマトウダイを使っただしやラーメンの商品を開発し、販売されていました。
捕食する時の頭の形が馬の頭に似ていることから馬の頭と書いて馬頭鯛と言います。浜田では「バトウ」と呼ばれ、浜田漁港でも多く水揚げされることから家庭の食卓にも並ぶソウルフードとして昔から愛されているそうです。そんなバトウを使った「バトウの万能だし」という商品のパッケージをリニューアルしたいと、広島市産業振興センターの「と、つくる」経由でご相談をいただきました。
元々の「バトウの万能だし」は地元では馴染のある魚ですし、定番で売れている商品。それを県外に向けて発信し、売っていくためにパッケージをリニューアルとしたいと考えられてのご依頼でしたが、まずバトウというワード自体が県外の人には伝わりにくいですし、単にパッケージを変えるだけでは購買には繋がらないと思ったんです。消費者がこの商品を見た時に、他とは違う魅力を感じ、それが脳内に残るようなもの=ブランディングが必要なので、まず最初にブランドを作りましょうと吉寅商店の来原社長にお話しました。
今回はマーケティングも必要だと思い、マーケティングからブランド開発のプランニングをされている内村さんにも入ってもらいプロジェクトをスタートしました。
まずは市場調査に出向き、来原社長はじめ現場担当者さんとワークショップを重ね、商品のことやその背景を知ることから始めました。内村さんと何度もミーティングを重ね、行きついたのが「うま味の会社になりませんか」というご提案でした。吉寅商店の持っているうま味のブランドが「うまがお」という位置付けです。
吉寅商店のだしを味わってみて思ったのが、昔、お母さんやおばあちゃんが作ってくれたような、懐かしい、ほっこり感のあるうま味でした。だし市場を調べた時に、だしの価値として、ほっこり感を打ち出している企業は他になかったんです。ほっこりするだし、という価値を届けていくことで他と違う見え方になるんじゃないかと思いました。
だし市場にはない、ほっこりうまい価値を届けたい。等身大の恰好つけてない、血の通っているようなコミュニケーションがしたいと考えた時に、ラベルはうまいものを食べた時の人の顔、うま顔が思い浮かんだんです。また、店頭で陳列した時のインパクトは非常に大事です。商品に顔がついているパッケージって中々ない。グラフィックとして既存のジャンルになかったものを持ってくるアプローチはありだと思って顔のイラストで作ることに決定しました。顔のモデルは、地元で愛されている感を出すために、実際の地元にいる方々を描いています。来原社長もその一人です。
今回、イラストのタッチを決めるために、何点か描いたものをウェブでアンケート調査し抽象的な印象を数値的に判断し、パッケージの方向性を固めました。客観的な意見を取り入れることができたのも、今回マーケターに入ってもらったメリットでしたね。
パッケージの他にも、リーフレットとコンセプトブックを制作しました。コンセプトブックは、うまがおの世界観を表現するためと、それを作っている企業の価値を上げるためにもあった方がいいと判断しました。
ストーリーは、帰省する娘と、実家で待っている母親が中心で二人が一緒にうまがおの商品を使ってご飯を食べる、という内容。この親子はうまがおのラベルにもなっていますが、まさにうまがおを使っていただきたいターゲット層を体現されていらっしゃいます。
このブックがあることで、展示会などで良いものを探しているバイヤーさんには刺さると思いますし、これを商品と合わせてギフトボックスにすることで商品価値があがり、もらった人の満足度が高いものになると思っています。
うまがおと合わせてリニューアルしたラーメンや鍋スープなどの商品は、リリース前に幕張メッセや広島の展示会に出展したところ、バイヤーからの反応も良く、良い手ごたえを感じています。現在は高級スーパーや道の駅のお土産物として販売されている他、オンラインショップも展開されています。
僕らが今回お手伝いさせてもらったのは、商品を活用したくなる理想のシーンを描いて届けるところまで。ここからは、販促のための広報や営業などの運用が始まります。
僕自身、うまがおブランドは世の中に共感者がいる商品だと確信しているので、あとは売る側もこのブランドを愛して、育てて、世の中に広めて行ってほしいですね。
僕らはお客様の求めるゴールを共有して、デザインを軸にブランディングをしている会社です。これまで多岐に渡る業種のクリエイティブに携わってきましたが、今はデザイン性の高いものは沢山あり、デザインの水準が世の中的に上がっています。その中で勝っていくためには深い目的理解を行ったうえで、ジャンプアップしたクリエイティブが必要です。この部分を強みに、お客様の求める結果を出すお手伝いをしています。
今興味があることは建築にグラフィックを絡める試み。人の動きや暮らしを作る建築は、ブランディングの手段が一つ増えるので、グラフィックを巻き込んだサイン計画などやってみたいなと思っています。今後もプロジェクトの根幹を作る部分をやっていきたいですね。
我々は広島に拠点を置くクリエイティブチームです。企業のブランディングから広告の企画制作等を行っています。仕事を通しお客様の事業が好転する。それを一緒に目指すパートナーでありたいと考えます。
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