事例 cucumu
山梨を拠点とする寺田ニットさんは、メインの事業としてニット製品の製造をされています。最初の出会いは、自社既存ブランドのECサイト制作のご相談でした。OEMメインで事業をされていましたが、百貨店の売り上げが低迷していく中、自社ブランドを拡張させて売上を確保していきたいというご状況だったと思います。ヒアリングする中で感じたのが寺田社長のものづくりに対する熱い思い。人を幸せにするニットを作る上で、環境を汚さない土に還るニットを作っていきたいことなどを聞かせていただく中で『地球にやさしく、みんなにとって優しい(=適切な価格の)商品を届けたい』という寺田ニットさんの根底にある思いが見えてきました。
その後、山梨の工場へ見学に伺い、OEMで培ってきた様々な知見はもちろん、ものすごい規模の数の服を、高いレベル製造する技術力を目の当たりして、非常に高いポテンシャルを感じました。そこで、地球にも人にも優しい服を作りたいという思いを体現するには、特定のターゲットに絞らず、みんなにとってコモンで、ニュートラルな印象のものでやった方がいいのではという仮説を立てたんです。元々あった既存ブランドが、割と婦人向けのテイストで、ターゲットが女性向きだったので、それとは別の、子供から大人まで同じ型を使ったユニセックスなスタンダードアイテムを、シーズン事に少しずつアップデートしていくスタイルのブランドを立ち上げてみませんかというご提案をしたところ、「それがやりたかった!」とすぐに共感していただけて。当初のECサイト制作ではなく、思いを形にする新ブランドの立ち上げプロジェクトがスタートしました。
僕らがいつも最初にやるのは、企業のDNAをヒアリングすること。そこからデザインの軸となるものや、言葉を探っていきます。同時に、競合となりうるアパレルやファクトリーブランドのリサーチは国内海外含め、ビジュアル、プロダクト、パッケージ面から徹底的に行いました。膨大な量を分析し、一緒に勉強しながら新ブランドがどうあるべきかを定義していきました。
まずはブランドコンセプトの言語化をしていく中で、商品デザインの部分、伝えたいメッセージ、商品名やその伝え方などグラフィック的な部分も含めて一気通貫してすべてをディレクションしてできたのが、新ブランド『cucumu』です。
寺田社長の思いを体現したcucumuのコンセプトは『つねにやさしく』。これを軸として、ロゴやグラフィックデザインをはじめ、商品展開の仕組み、素材やサイズの考え方などすべてのことを取捨選択して決めていきました。僕らとしてもファッションの領域で商品そのものをデザインするのは初めてのこと。ソフトで表面的なシルエットのデザインを送り、それをニットの設計図面に起こしてもらいます。そこからの細部の細やかな処理にこだわりながら製造していく過程では、ものづくりの先輩として、こちらも色々教えていただいたなと思います。そうやって、クライアントと共に同じ目標に向かって、共通の言語で目線を合わせてやりとりしながら、寺田ニットの思いを体現したブランドを立ち上げました。
立ち上げから2シーズンが経過しましたが、現在も継続して商品作りや広報活動など一緒にやらせてもらっています。実際に商品を企画し販売するというクライアントサイドの立場に立ってみてはじめて、商品を届ける責任と、広報活動の大切さが身に沁みました。今後も、沢山の方に思いを込めたニットをお届けするために、広報面流通面含めてサポートしていきたいです。
また、一緒にcucumuをさせていただく中で、寺田ニットのコーポレートサイトのリニューアルも行いました。cucumuというプロジェクトを通して、色々な事を追及されてきて今の寺田ニットがあることを理解していたので、それを再設計する形で『とことんこつこつ、あったかく』というコンセプトを置きました。寺田ニットの一本筋の通った思いを、ストーリーとして優しく伝える表現のウェブサイトとなりました。
今回、僕たちは一世一代でここまで大きな企業になった寺田ニットさんの大きなターニングポイントの立会人をさせていただいたと思っています。今のタイミングが寺田ニットさんにとって新しい挑戦であり、言うなれば第2章の始まり。その隣で伴走するパートナーとして、主役であるクライアントを、いかに魅力的に表現していくかが僕たちの役割だったと思います。その中で大切にしていたのは、よく話を聞き、誠実であること。良いデザインをする会社は世の中にいっぱいある。その中で思考やデザインのプロセスをクライアントと共有しながら向き合うスタンスと誠実さは、僕たちシフトブレインの特徴でもあります。今後も同じ方向に向かっての旅路を楽しみながら、ブランドを育て成長させていきたいと思います。
シフトブレインは、今回の事例のような企業や商品のブランディングプロジェクトを多く手掛けてきました。ウェブサイトやロゴ、紙ものなどアウトプットの形は様々で、クライアントの課題に対して必要なことをご提案しています。自分たちとしては人の感情を動かすような、気持ちに対してアプローチするようなものを作りたい、という思いで仕事をしています。
本社は東京ですが、コロナ渦をきっかけに働き方は完全フルリモートになり、スタッフはどこでも自分の好きな場所で仕事ができる環境です。2021年にはエンジニアの佐藤が広島に移住し、現在広島の江田島市にサテライトオフィスの開設準備をしています。佐藤曰く、「もう東京に戻れない(笑)」という位、広島の自然豊かな環境や人のあたたかさを感じながら仕事に集中できているそう。広島でも、これまでやってきた知見を活かして案件に取り組みたいですが、それ以前にまずは地元の制作会社やクリエーターさんたちと横のつながりを築いていきたいですね。地方の豊かな環境で周りの方々と一緒に、よりクリエイティブな仕事ができたらいいなと思います。
デジタル領域を中心にコミュニケーションプランニング、デザイン、テクノロジーまでを一気通貫で行うデジタルクリエイティブエージェンシー。
江田島市能美町中町2322-1-2F(江田島サテライトオフィス)