事例 福山ゴム工業 ブランディング
福山ゴム工業さんとの出会いは、お付き合いのある会社さんからのご紹介です。10年前に作ったウェブサイトをリニューアルしたいというご依頼でしたが、先方がまとめられていた課題を拝見した際に、ウェブサイトだけ新しくするのではなく、全方位的に整備していく必要があると感じました。
10年前と今では社会的な状況や価値観も変わっているため、この機会に内外のピントを正しく合わせるためのリブランディングをしませんかとご提案しました。「リブランディングってなんだ?」という所から始まり、何度かお話させていただくことで重要性を感じていただきプロジェクトがスタートしました。
契約後のキックオフミーティングでは、現場の方から経営層まで集まってもらいワークショップを行います。これは、限られた時間でクライアントさんを深く理解することが目的なんですが、同時に社内の文化やムードなども感じ取っていくことができる貴重な時間でもあります。
参加メンバーの選出条件としては、多角的な意見を収集できるように現場の若手から経営層までをミックスしてもらっています。通常、チームでディスカッションするとお互い正しいんだけど合意には至りにくいですよね。それは、その人のポジションによって、見ている景色や課題、 接する相手などがすべて異なるからなんです。そこで、レクリエーション感覚でワークショップに取り組み、全員で現状の洗い出し・理解・共有をしながら脳内リンクすることで、はじめて話し合いが成立する土壌ができあがります。
ワークショップでは、SWOT分析とTOWS分析(※1)を使い、会社の強みや弱みの把握と合わせて、競合や市場、政治経済などの社会基盤全体との関連性を見ていきます。リニューアルは内部だけ、リブランディングは内と外とのピント合わせというイメージです。その他、2〜3のフレームワークを活用しながら、自分たちの社会的役割や今後の方向性などの組織の共通認識として紡ぎ出していきます。
この段階で、既存のCI/VIと照らし合わせていき、整合性を図ります。まずロゴについてですが、長年2部門で別々のロゴを使用されていましたが、今後より相乗効果を高めていくためにロゴを統一化しました。社会的役割を分かりやすく整理した結果、これまでは1頭だったイルカが部門数を表す2頭になりました。現在、ここのエピソードは鉄板ネタになっているとのことです。
次に、タグライン(※2)ですが、こちらは再考の結果、既存のものに着地しました。リブランディングというと、全てを刷新してしまいがちですが、全体を俯瞰しながら、ズレがない部分は据え置き、会社がこれまで築いてきた資産をリセットしないように再構築することが重要だと感じています。
このような形で、自社のあり方を一つひとつ視覚化と言語化して再構築をしていきます。
※1 SWOT分析とTOWS分析 SWOT分析は、自社の事業の状況を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの項目で整理して分析する方法。 TOWS分析はSWOT分析でまとめた4つの項目を掛け合わせ、具体的な戦略を検討する方法。
※2 タグライン 企業理念やコンセプトなど、顧客に伝えたいメッセージを簡潔に伝えるための言葉のこと。
同社には工業用品部門と、履物部門の2部門あり、それぞれBtoB、BtoCとビジネスタイプおよびターゲットが異なります。そのため、 サイト自体を分離するかという案もあったのですが、お互いの部門が補完し合っているとの社員さんの声も踏まえ、より相乗効果を発揮できる設計にしました。そして、「機械と人の足もとを支えて未来を築く」というブランド理念を最上部に置き、その直下に事業としての2部門を配置した構成で、人・製品・会社の魅力をプレゼンテーションのように見せていきました。
また、撮影で各部署や工場を回ったのですが、すれ違う方みなさん自然体であいさつされるし、集まれば和気あいあいと楽しそうで、「良いな〜、なんか村みたいだな〜」というのが正直な感想で、この雰囲気を伝えるべきだと感じました。以前のサイトは堅い印象でしたが、実際には若い人が自発性を持ってイキイキと働いていることを受け、堅実性を保ちながらも少し柔らかさと楽しい雰囲気を増したデザインに方向づけしました。
リブランディングした新しいサイトを公開して3か月後、企業や一般の方問わず、問い合わせや資料請求がこれまでにはあり得ない数が入ってきているとのことで、僕も一安心しています。ワークショップなどでみんなが脳に汗かいて紡ぎ出したものが地域社会と共鳴した証だと思います。
本件ではプロモーション施策は一切手をつけていないんですが、受け皿であるサイトを情報整理するだけで劇的に成果が上がることは多いんです。効果が出るかどうかは初面談で分かるのですが、クライアントさんのポテンシャルが充分にあり、その上で情報設計がなされていない会社さんは跳ねあがります。要するに、それだけ機会損失している可能性があるということなんですよね。
また、採用も強化したいとの要望もありましたが、分かりやすく整理された情報が周囲に届き始めると、社員の方が外部からの反応を直接受けることになります。自分たちがどう見られて、どう評価されているのかを体感することで、個々の意識や行動が変わりインナーブランディングも進みます。今回、自分たちのあり方を再確認し、それに共感共鳴してくれる人を増やすための準備が整ったので、今後はより裾野を広げていく活動を進められるようです。
今回のリブランディングで、福山ゴム工業さんのポテンシャルを磨きなおして、今の時代にフィットさせることが飛企画の役割でしたが、本来の目的はそれだけではありません。まれにですが、「この地域の同業種の依頼を受けないでほしい」などの要望もあります。その気持ちも分からなくもないのですが、飛企画は「そのクライアントさんを勝たせる」ために戦略提供しているわけではありません。いろんな思考の消費者がいて、自分にあったカラーの会社やサービスを選択ができる状態が健全だと思っています。
世の中にはたくさんの業種や会社があり、それぞれが役割をもち協力し合って、社会という運命共同体ができています。その中で自分たちならでは優位性を活かし、独自の存在感をそれぞれが発揮し共存してくれればいいわけですよね。ポテンシャルを秘めたクライアントさんが花を咲かすと、その先の地域社会が湧き上がる。結局、All Winになるように戦略設計をしないと成立しない時代なので「お客さんの先のお客さんを喜ばせる」ことにフォーカスしています。間接的ですけど、思い描いたコミュニケーションやムーブメントが起こり、その反響を目耳にすると純粋に嬉しいです。
クライアントさんのポテンシャルを活かし、地域社会までAll Winになるブランド基礎構築・戦略設計をサポート。採用、集客、事業展開などの課題に対し、根幹施策中心に全面的な底上げを図ります。
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