事例 大成農材株式会社 ブランディング
大成農材さんは除草剤や有機肥料の販売をメインに、それらを使って育てた青果の販売もしている企業です。これまでもデザイナーに発注したことはあったそうですが、距離の問題もありコミュニケーションで苦労されたと伺っています。私たちは知り合いの企業さんからの紹介で、大成農材さんとお会いしたのですが、たまたま本社がご近所で。そんな距離が近いといった理由から、液体肥料のラベルデザインの発注をいただいたのが始まりでした。当時2018年で、そこから継続してこんな長いお付き合いになるとは思ってなかったですが、今思い返しても本当にありがたいご縁だったと思います。
最初のお仕事となった液体肥料のラベルは、原料の魚のイラストを横ではなく縦に配置したものをご提案したのですが、魚が立っているのは業界的には良しとされていなかったみたいで。でも、社長はそれ自体も新鮮に受け取ってくれて、「もっと変わったことを考えて、やりたいように提案してください!」と逆に応援してくれて。こちらとしてはありがたいですよね。
杉浦社長はデザインに対する熱意が強く、良いものを良いデザインで伝えたい、という意識をすごくお持ちの方でした。だから私たちは色んな提案をさせてもらいましたね。「デザインってお金がかかるから、無駄な投資はやめましょう」「自分たちがどこに行きたいのか目標を持ちましょう」といったことなど、たくさんお話しさせていただきました。
そんな対話を経て『人と農業をつなぐ』というビジョンが見えてきたのは自然な流れでした。社長の思いを表現し、会社のロゴも、今の従業員の方々に似合うような形に刷新しました。その他にも販促物や外に出る広報物などもこちらにご相談いただくようになりました。ホームページのリニューアルも監修させてもらっています。
また、2022年5月に本社オフィスの内装リニューアルをされて、そのプランニングデザインもお任せいただきました。今の会社のビジョンや商品の雰囲気に合った素敵なオフィスになっています。こうやってトータルでデザインを監修させてもらえる仕事って、中々ない。広島でこんなクライアントに巡り合えたことが本当に誇りに思いますし、ありがたいことですよね。
三原にある自社農園、大成ファーム。自社製品の使い心地も含め、農家さんがどういうことに困ったり喜ばれたりするかを自分たちの肌で感じないと本当に良い提案はできない、という考えでスタッフ全員で農業に関わられています。
そこで育てたトマト「ひりょうやさんのトマト」を販売し、消費者へ直接届けています。中に入れるリーフレットも作りましたが、びっくりするのが絵本まで作ったこと。以前何かの雑談の時に、農業という大きなテーマをお子さんにも身近に感じられるような食育をしたいと言われていたんです。それが今、色々とつながって実現できています。トマトを使ったトマトジュースもとっても美味しいんです。シンプルにそぎ落としたパッケージは、ギフトとしても喜んでもらえているそうで私たちも嬉しく思っています。行動にデザインが伴うことで『人と農業をつなぐ』ビジョンを着実に体現されていますよね。
共にお仕事させてもらっている4年間で変化したことはたくさんありますが、一番大きいのは従業員さんの意識の変化です。あるマネジャーの方から聞いたのが、部下の働く姿勢がすごく変わって、やりがいを持って仕事に取り組んでいるということ。自分たちのやっていることが、会社の中の人を元気にしているんだと感じさせてもらって感動しました。オフィスリニューアル後は、さらにそれが顕著で、働いている方の表情や服装まで明るくなったと思います。
私はオフィスに行くたびにいつも従業員さんに声掛けをしています。それは、私たちが販促物を作るためのデザインだけをしているのではなくて、デザインを通して会社や人をデザインできたらいいなと思っているから。なるべく直接お客様と会って、話しながらその人の良い部分を引き出すことは、結局デザインと一緒なんですよね。
ひとつ素敵なエピソードがあるんです。去年の年末、コロナ禍で恒例の忘年会ができなかった代わりに、家族で美味しいものを食べてくださいと、杉浦社長が従業員さんへ一律でお金を渡された話を聞きました。従業員も、その家族も大切に思っているからできることですよね。その話を覚えていて、今年のテーマは『食卓に集まろう』として、ポスターなどに展開しています。そうすると杉浦社長が「僕の話をよく聞いてくださっているんですね」と言ってくれる。そういう部分でとても波長が合うし、私たちのこともちゃんと見てくれているんです。
今、大成農材さんは、こんなことができたらいいなと思い描いていたことが具現化できてきたところ。肥料や除草剤を作る会社という枠を超えて、農業をやっている方の思いを伝えたい、と新しい取り組みもスタートしています。私たちも、デザインで何かを伝える、という部分は同じなので、話していて共感するところも多く、仕事ながらとても楽しいです。仕事が人を成長させるといいますが、大成農材さんに関わらせてもらった4年間でハンディ・ダンディのメンバーも成長させてもらっています。
私たちは全国の洋菓子店を中心とした販促物のデザインサポートをメインにお仕事していますが、ここ5年くらいで仕事の内容が変化しています。大成農材さんのように会社全体に関わるお仕事もこれまでになかった仕事のひとつ。社会自体が変化し、すごく多様化している中で、沢山ものを売りたいという状況を踏まえながらファンに対して良いものを提供するために、細やかなデザインが求められている。だからきめ細かく対応できる、我々のような小さな会社もお客様と密接に関わって仕事ができていると感じています。
今、社内は私含めて4名。これからもお客様のブランディングを一つずつ丁寧にしていくことで、自分たちも成長していけたらと思っています。
印刷物を中心としたデザイン及びプランニング。
ことばには 宛先がある。
誰にどう届くかを考えながら
潔いデザインを心がけます。
handy dandy credo 「仕事も、人生も、楽しく」
広島市中区八丁堀4-7