事例 広島千茶荘
広島千茶荘さんは製茶業の会社。自社でブレンドしたお茶商品を、カタログ通販を中心に全国のお客様へ直接販売されています。また、お茶を飲むための器や、美術品、お茶菓子など、お茶に関連した幅広い商品展開をされいていて、お茶を軸としながらも、それだけに留まらない活動も魅力の会社です。
特にお菓子に関しては、様々な企業と組んでオリジナルの商品開発をしておられます。その一環で地元企業とコラボした新しいチョコレートの商品を作るという時に、パッケージデザインをどうするか検討されていて。広島千茶荘さんとお取引されている印刷会社さんから私を紹介してもらったのが仕事の始まりでした。
広島で人気のマルコショコラトリ―とコラボしたチョコレートは、厳選した茶葉を使用し、原料にこだわって作っているので価格が800円と高め。だからこそ、その価値を感じられるような、値段なりの見栄えと、こだわりの見えるパッケージが必要とされます。基本的に流通は通販ベースで、店頭で棚に並べて販売するわけではないので、商品情報を主張せずにシンプルなビジュアルで表現しています。抹茶、ほうじ茶、煎茶の3種類あるので、それぞれの茶の色に合わせて、香りが立ち上がる感じをイメージしてデザインしました。
細かいデザインのリクエストは特になくて、すべて任せていただけました。結果、それまでにはなかったすっきりしたパッケージデザインも気に入っていただきましたが、さらにお茶を含めた売り方の部分を変えてみてはどうか、というお話をさせてもらったところ、他にも相談できそうだと思ってくださって、一緒に商品開発をさせていただくことになりました。
社長に現状の課題をヒアリングした際に、今後どう市場を広げるかも含めて、業界的に行き詰っている所を懸念されていたんです。確かに、今の若い人にとっては、昔のようにお茶を淹れて飲むという行為自体薄れてきていて、お茶がペットボトルで手軽に手に入る時代ですよね。でも、その一方では、すごくこだわって美味しいお茶を飲みたいという人もいる。2面性があって、まだ伸びしろがある面白い業界だと私は思っていて。そこで注目したのが『シングルオリジン』という考え方でした。コーヒー業界でも注目されているように、ブレンドした安定感のある味に対して、個性のある単一品種・単一茶園で作られる味を楽しむこと。ブレンドの良さとはまた違う楽しみ方として作ったのが、ほしぞら茶という商品です。
ほしぞら茶は、日本一星空が美しい村と名高い福岡県は八女市の星野村で栽培された茶葉。そこで育ったお茶に『ほしぞら茶』というネーミングをつけて商標をとり、商品自体をブランドとして売り出すことを提案しました。また、お茶の袋って意外と大きくて消費しきれず残りがち。色々な味を飲み比べられるように小さいサイズで小分けにして、3種類の茶葉をセットにして売り出したところ、とても反応が良くて。新しい展開をすぐに実践できるのがカタログ通販の強みですよね。
ほしぞら茶に合わせて、他の商品のパッケージも一新しました。上質なものを好まれるターゲット層に合わせて、全体的にきれい目で上品な感じにしています。白ベースの箱はシールや帯で変化を出せるのでコスト的にも無駄が省けますよね。
パッケージリニューアルと同時に、大切な販路である通販のカタログリニューアルも行いました。リニューアル前はお茶商品のみの、いわゆる普通の商品カタログだったんです。チョコレートをはじめ、どら焼きやアイスなどコラボ食品も多いので、よりわかりやすくお茶と食品を分けて2冊にし、それぞれこだわりを伝えていくようにしました。さらにお客様に楽しんでもらえるように季節の企画やお試しセットなどの企画ものをやること、そして全国にお客様が多いので広島感をだして旅気分も味わえるように編集全般もガラッと変えましたね。
リニューアル後、これまでのお客様からうれしい評価をいただけるとともに、お買い上げ単価も上がったのは、変化を受け入れてくださった証拠だと広島千茶荘様も喜んでいただけました。リニューアル前からあった商品も、ビジュアルとキャッチコピーを変えて掲載することで前年比3倍の伸び率となり、改めて見せ方の重要性を感じました。
カタログリニューアルのタイミングからコンサル契約で商品開発からデザイン制作まで担当させていただきましたが、やはり自社の設備と販路があるメーカーさんは強いです。アイデアを伝えるとすぐに試作をしてくださるスピード感もありますし、美味しいものに対する目利きの力と他社との繋がりがあるからこそ、新しいことにも挑戦できる。
今後は、次の世代につないでいくための新しい顧客作りと売り方が課題。美味しいお茶と豊かな食卓のために常に新たな商品開発をし、作り、伝える努力をされている姿勢に、外部の立場から新しい視点とアイデアと見せ方を合わせて、伴走してサポートしていけたらと思っています。
元々はクルーズデザインという屋号で制作を中心に活動していましたが、2022年に事業承継して法人化したのがBAMBI(バンビ)です。今はデザイン制作単体のご相談から、新規事業や商品開発など、商品をどう見せてどう売るかといったプロデュースやマーケティングのご相談が増えています。
最近は、小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援にも力を入れています。これまでは作る側であるメーカーさんのサポートが多かったのですが、小売業は逆に売る側。扱う商品の幅が大きいですし、より買う人に近いので、顧客視点でのデジタル対応やデザインが必要とされています。中にいると見えないことも、私のような外部の立場からの気づきを伝えることで次のステップへ進めるお手伝いをしていきたいです。
実は今年、一般社団法人日本マーケティングデザイン協会を立ち上げました。これまでのマーケティングとデザインの経験を活かして、顧客とメーカー・小売り、制作とクライアントをつなぐことで良い関係性を構築し、様々な可能性を広げていきたいと思っています。
価値を伝え、顧客の共感を行動へとつなぐ統合マーケティングの実践を通じて、コンセプト開発/ブランディング、 EC/通販のマーケティング企画デザインをご支援します。
広島市南区京橋町1-7 アスティ広島京橋ビルディング