事例 ローカルビジネスデザイン
SINさんはMATOの会計業務をお願いしている税理士法人です。僕が独立して13年なので、もう10年のお付き合いになります。基本的に会計は、売上や請求、領収など、企業活動をした後の業務なのですが、SINの代表・下川さんが大切にされているのは「数字の上から未来を創る」ということ。過去を整理するだけの作業ではなくて、未来を作る経営支援がしたい、という思いで仕事されています。ルーティン作業の多い会計業務はクラウドサービスに任せて、その分空いた時間に自分たちの脳みそを使ってご提案することで、企業を未来に連れていくお手伝いをする。そんな先進的な税理士法人を率いている下川さんは、既存の会計にクリエイティブな新しい視点を取り入れて、経営支援や業務改善支援など、一般的な税理士さんがやっていないことにも取り組まれています。
MATOは基本的に年間契約で企業さんに入り、企業活動に必要なクリエイティブをトータルで作る仕事をさせてもらっています。何か一つ作ってと言われても、そのお客様のことを良く知らないと作れないんです。今の状況を知って、将来どんな姿になるべきなのか、それを実現するためには今何をしたらいいかを経営者にヒアリングしながら、必要なものを提案して作っています。逆に短期的な視点で何かを作ることは、お客様に対して失礼に当たると思っているので、そういった仕事はお請けしていません。
実は、デザインの年間契約というスタイルを最初に勧めてくれたのが下川さんだったんです。税理士が企業を会計で支えるように、僕たちはデザイン面で支えている。だから根底の部分でやっていることは一緒なんですよね。
僕たちの協業の始まりは、SINさんがお客様からロゴや名刺、ウェブサイトなどの相談を受けた際に、MATOを紹介してもらったことがきっかけでした。そこで、見せ方や伝え方を変えたことで、お客様のビジネスがうまくいったんです。普通の会計事務所だったら、デザインとかよく分からないから会計業務のみに関わるのが常ですが、SINさんは会計だけに留まらないんですよね。むしろ、自分たちのことを“クリエーター”だと言われていて、会計といったルーチン業務じゃないところで価値を出したいと動かれています。数字とデザインは表裏一体で切り離せないものと理解されているので、経営に悩まれていたり、ビジネスを加速させたいクライアントへ、僕たちもパートナーとして入らせてもらって、数字とデザインの面からビジネスを支える、ビジネスデザインという仕組みができました。
そういったビジネスデザインをしていると、SINさんにはクライアントから会計だけではない様々な相談が来るんですよね。洋菓子・ケーキの製造販売をされているクラークシーゲルさんもその一つで、販売拡大したいというご相談がSINさんに来たので、僕らが年間契約で入らせてもらいました。僕らがすることは絵を描くというデザインだけではありません。ここでは、これまで季節のイベントをする度にDMを作り、自分たちでポスティングしていたのをLINE運用に切り替えました。その方が無駄なく効率アップですよね。結果、お店で年に一度開催する感謝祭では大行列ができました。また、SNSを自分たちで効果的に運用できるように、写真や動画撮影のレクチャーを行い、スタッフ自ら発信できるスタイルを整えました。以前は僕らが撮影していましたが、それだと時間もかかるしスピード感がない。社内でできる人や、ポテンシャルがある人に任せて、一緒にビジネスをする感じで関わっています。
青果を卸しているCAP(株式会社クリエイト・オブ・アグリカルチャープラン)さんは業績が好調で、さらに販路拡大やCIの刷新をお考えだったんです。フルーツトマト専門のウェブサイトを作りたいとなった際、普通はフードコーディネータやスタイリストを連れてきて、商品撮影を行うのが常です。でも、CAPの奥様が料理が好きで、器もしっかり揃えられていると聞いたので、それならば中途半端に外部の人を連れてくるより、中のことを分かっている人にやってもらったほうが良い。料理のレシピやスタイリングなどは奥様にお願いして商品撮影を行ったところ、素晴らしいものができています。
僕らは商業デザインをしているので、作ったものが機能しないと、究極それってただのゴミだと思っているんです。だからこそ、先の事例にもあるように、仕組みを作ることもビジネスデザインとして取り組まないと、これから先は厳しいと思っています。
目に見えるものだけがデザインではないという意識は、SINさんも同じ考え方。手法は違えど、結局は企業さんの良いところを引き出して、進むべき方向性を示してあげることが価値になると思っています。僕らは言った以上は叶えないといけないデザイン力があるからこそ、このビジネスができている。課題の発見からアクションまで一貫してサポートして、企業の成長を加速させたいですね。
下川さんとは、今後も色々コラボして企業さんの経営支援をしていきたいねと話しています。MATOとSINでMASINっていう構想も、今実現しつつあることです。企業の経営者が大きな決断をする際には、デザインと数字が関係することが多々あります。例えば、SINさんのクライアントにMATOがパートナーとして入り、デザインを変えた結果をSINさんが数字としてダイレクトに見る。その数字を基にMATOがデザインをアップデートして、それをSINがモニタリングする、それを繰り返すことでデザインの投資効果が計れるので、経営判断がしやすくなりますよね。
他にも、最近は補助金がたくさんあって、事業計画書を書くのはSINさんの専門ですが、デザインサポートとして僕たちが入ることで、企業の軸となる部分の整理ができるんです。そうすれば、審査の方にも共感を呼ぶような提案書がスピーディに完成する。このMASINで広島の企業さんをサポートできたら、皆がWinWinな関係になると確信していますね。
僕らのこのスタイルは、ぜひ他の企業さんにも取り入れてもらいたいと思っています。それは、このやり方が本当に企業のためになると思っているからです。そうやって広島の企業全体の底上げができたら嬉しいですよね。絵を描くだけのデザイナーではなく、デザインしたものがどのように経営に紐づくかを理解している、そういったデザイナーがもっと増えていくといいなと思っています。
そういう後進が育てば、僕は最終的にここを降りて他のことをしてもいいと思っています。今僕らがやっているのは、お客様のキャンバスの絵を描かせてもらってビジネスしている商業デザインですが、将来的には自分たちで「こんなの良いよね」というものをゼロからデザインして、ブランドを作ることもやってみたいです。この仕事をしているといろんな業種と関わります。今の仕事をやりながら勉強して、そして成長していきたいです。
※MATO JAPANの行う全てのプロジェクトにおいて、税理士法人SINと協業している訳ではございません。
企業の事業整理からはじまり、マーケティングを取り入れたブランド構築、商品やサービスをターゲット(BtoC)に届けるしくみづくりを踏まえた広告企画・制作。
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