事例 トリドリ亭
宇品に小さなパン屋さんを開店する友人がいるから、ロゴマークを頼みたい。僕の友人からそう相談を受けたのがトリドリ亭さんでした。友人は僕の経営している店舗AIR P°CKET.の長年お客さんでもあるので、僕のデザインテイストを分かってくれた上で、紹介してくれたのだと思います。相談を受けたのはロゴマークですが、合わせて、ショップカードと看板も作らせていただきました。トリドリ亭の開店は2020年春とのこのことで、店主の奥田さんを紹介してもらって、どんなお店にされるのかヒアリングするところからスタートしました。
お会いした奥田さんは、ふんわりとした雰囲気をまとう、穏やかな感じの方でした。ロゴデザインに細かいご要望はなく、お任せしますという形で依頼を受けましたが、「トリドリ亭」の店名にある「鳥」のようなイメージは入れたいとはおっしゃっていました。
店名の由来は、パンだけではなくて、焼き菓子も色々あるということや、好きなアーティストの曲がきっかけにもなっています。奥田さんのお母様が古本を扱われている屋号が「黒猫亭」ということもあり、それとやんわり関連を持たせた店名だということも伺いました。ご要望と、奥田さん自身の雰囲気をくみ取りながら、僕なりにロゴのイメージを考えていきました。
お話を伺った時の最初の印象から、トリドリだから鳥が二羽いるとちょっと幸せな感じがするなと思ったんです。あとは言葉の響きがなんとなく和っぽいなと。「亭」という字を調べると、人があつまって休息する場所の意味もあるらしく、そこからパンの下に二羽の鳥がいるようなイメージがいいんじゃないかとスケッチしていきました。全体的には日本の家紋を意識したテイストです。そこをベースに作り込んでいって、今のロゴが出来上がりました。割とスムーズにデザインができたケースではありますが、全体として見た時のバランスを整えるため、最終的には1mm単位の微調整を何度も繰り返して完成しました。
完成したロゴは、奥田さんに「求めていた感じの雰囲気です」と言ってもらえました。ロゴを使って、看板とショップカードにも展開していますが、お客様からも良い反応がいただけているようです。
デザインする時にいつも心掛けているのが、空気をちょっと楽しく、和らげるような役割ができたらいいなということ。あると何だか楽しいね、みたいな存在になれると嬉しいです。作り手である自分が楽しむのも前提として必要ですが、独りよがりの楽しさではなくて、ロゴや制作物を目にした人が「なんだかこのお店楽しそう」と感じられることが大事なんですよね。そんな風に、人の心をちょっと動かせるデザインを作りたいと思っています。
僕の得意なこと、というか特徴として、今回も納品したようなグラフィック的な要素が入っている看板の製作ができることだと思っています。ありがたいことに、これまで雑貨屋さん、自転車屋さんやカフェ、他にも個人の方の表札なども含めて、様々なロゴや看板のデザインをさせていただいてきました。製作実績をSNSで公開しているので、多分そういうのを見てもらって自然とご依頼が増えているように思います。特に、看板屋です、という風には言ってないのですが、欲しいと思ってくださる方がいるということは、嬉しいことですよね。
僕のお店兼事務所であるAIR P°CKET.は、十日市町で10年、その前は的場町で約8年運営しています。お店で販売している物は、陶器、家具、照明、雑貨など様々で、これらは僕がデザインしたものを、広島の職人さんたちに形にしてもらったオリジナルプロダクトになります。一般のお客さんと、十日市町という平和公園に近い場所柄、海外の方も多く訪れてきてくださいますね。
お店に来てもらったら僕の作風がなんとなく分かっていただけると思いますが、ベースにあるのはシンプルな中に、どこかグラフィック的な面白さがあって楽しめる要素があること。今後もそういったものを通して、自分のデザインが喜ばれる機会が増えていくと嬉しいです。
元々は舞台美術やメイクなどの表現を学んでいたのですが、練習で描いていたイラストが面白くなって、個展を開いたのをきっかけに、グラフィックデザインの世界にシフトしていって今に至ります。今後は、まだ取り組んだことがない素材や手法にも目を向けて、ものづくりができたらいいなと思います。
アイデアのインスピレーションは普段の生活の中で、こんなものがあったらいいながベース。多分いろんなものを見ていて、この形が何かに使えそうだな、とかついつい癖で考えています。自分の商品作りでも、クライアントさんのためのデザインでもそうですが、最初は自分一人称でのいいね!から、家族や友人、クライアントさんみんなのいいね!になることが嬉しいです。今後もお店という場所を続けられること自体もありがたいことですが、そこから自分のデザインが生きる場所がたくさんの方に広がっていけば良いなと思っています。
日常に寄り添いながらデザインのたのしさを共有できたらという思いでグラフィックとプロダクトのデザイン・製作をしています。
広島市中区十日市町1-5-5 1F