事例 ENGAWA
瀬戸内生活様式研究所の越智さんとは昔から親しくさせてもらっています。二人とも瀬戸内で育ちで、越智さんは江田島、僕は呉の港町で育ちました。この研究所の設立には僕も携わっていて、きっかけは撮影のお仕事でいろんな地域に行ったりする中で、自分が住んでいる瀬戸内の魅力を知ってるようで知らないことに気づいたことです。だったら瀬戸内の魅力を掘り起こし、発見しながら事業として展開したいと考えていた頃、越智さんも同じような考えをお持ちだったので一緒に瀬戸内生活様式研究所を設立しました。越智さんが代表、僕はブランドプロデューサーという立場です。そして、2年前に港町出島にENGAWAをスタートさせました。
ENGAWAは、瀬戸内の良いものに触れるきっかけづくりの場として、瀬戸内で作られたプロダクトから選ばれたものだけを取り扱うセレクトショップです。知っているようで知らない、瀬戸内の新しい価値に触れてもらう空間です。そして、生産者さんや製造業の方だけだとプロモーションやブランディングまで手が回らない部分もあるので、そういった部分を僕達が拾い上げながら、効果的に商品を価値化するためのお手伝いも行っています。今後は、販売しているプロダクトを作る人の顔が見えるような仕組み作りも、行っていく予定です。
将来的にはENGAWAを通じて、良いもの作ってる事業者さんや生産者さんのものを世界で認められるものにしたいです。瀬戸内の商品を、フランスを中心としてたEU圏に輸出できるようにしたい。ENGAWAではお茶をやっているんですけど、瀬戸内産のお茶を海外の人が飲んで「このお茶が美味しいね」って言った瞬間に、その生産者ってめちゃくちゃ嬉しいと思うんですよ。フランスのナントカっていう町のおばあちゃんが「このお茶美味しいね」って言ってるのは、すごいロマンがあると思っていて。生産者さんにとって、やっぱりそういったものがモチベーションや自信になると思うし、やっててよかったって思いに変わると思うんです。瀬戸内のものを海外に、一人でも多くの人に良いものだと認識してもらえるようアプローチしたいです。
ENGAWAが今までにない形なので、イメージしづらいみたいで、「何をやるんですか」と当初はよく聞かれました。実際に来てみると分かってもらえるんですが、来てもらうために映像でプロモーションするのは高度な技術が必要だと思いました。
そこで、僕が大事にしたのは「行ってみたい」です。映像としてそれがを表現することを試みました。ENGAWAに行って写真を撮ってみたい、来た人が写真を自然と撮ってしまう、そしてSNSにアップしてしまう。そういった観光地のように、来た人がENGAWAの情報を拡散してくれる仕組みづくりに力を入れました。今回は、空間プロデュースもライフマーケットで行っているので、その際にも、ついつい写真に撮ってしまうような空間作りを徹底しました。僕は写真家で広告の人間ですけども、オープニング時のプロモーションを除いては広告はあまりしていなくて、それよりも拡散する仕組みづくりに注力しました。
ライフマーケットの僕が今回担った役割は、ENGAWAが何が目的として、世の中に何を発しようとしているかを、映像や空間を通じてメッセージしたことだと思います。施設や会社も人と同じだと思っていて、何も喋らない人って何も表現できてなかったりするじゃないですか。何もアクションを起こさない人は何者か分からない。常に何か発信していく、発言してアクションを起こすことによって、その会社って形作られていくし、彩られていくと思うんです。僕がやっている仕事は、そのメッセージの部分。こういう想いがある、これを大事にしている、そのことを映像やデザインを通じて、メッセージとして発信していくことが僕の仕事だと思っています。
もともと写真撮影を中心に広告のお仕事をしていましたが、9年前の東日本大震災の頃に、あれって思うことがありました。当時とてつもない量の仕事をやっていたので売り上げは上がっても、失っていくものが結構あったので、この生活をこのまま続けて良いのかと。それから考え方が少し変わり、写真の仕事ではなく、何か触れ合い、コミュニケーションとか「コト」を作っていくこともできないかと思うようになりました。そして、ライフマーケットという会社を作りました。ライフマーケットでは、広告のお仕事をやりながら、イベントの企画運営、空間プロデュースなどに取り組み、3年前には自社事業の飲食業として「ハーバークラブ」も立ち上げました。ライフマーケットという名前は直訳すると「人生市場」、毎日をどういうふうに楽しくクリエイトしていくのかをテーマにした会社です。
僕は、みんな働き方を改めた方がいいと思っているんですよ。ここ出島は、屋上に上がったら本当に空が広くて海も見えて、余裕があるんです。朝日が見れて、夕日が見れて、海の香りがして、環境がすごく良い。この感覚は広島市中心部にはないと思います。特に僕が港町育ちなんで、こういう雰囲気がすごく好きです。倉庫しかなくて生活感のない感じも好きで、無国籍で広島らしくない場所。広島のカルチャーがぼぼないので、逆にそこに色付けしていくのも面白いと思っていて、前から出島に魅力を感じていました。ハーバークラブやENGAWAを始めてから、出島に来た人は相当増えているので、ここの魅力が伝わっているんだと思います。
あたらしくて、おもしろいこと
常にワクワクするものだけを、
つくっていきます。
広島市南区出島1丁目32-59