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ブランドの世界観を
伝える熊野筆の
新しいプロダクト
事例 IRODORI
株式会社晃祐堂
化粧筆メーカー
株式会社中本本店 / 吉川富美子
プロダクトデザイン

INTERVIEW

印刷が本業の会社の中での新しいチャレンジ

晃祐堂さんとの出会いは中国経済産業局主催のカワいいモノ研究会に参加した事でした。弊社は長年印刷業としてお仕事をしていて、印刷ありきの中でデザインや企画を作ることはあっても、プロダクトデザインは会社としてはあまり前例のない仕事でした。パンフレットなどの文字物の仕事が多い中でも、ノベルティなどの小さなモノを作ったことはあるのですが、やはり印刷会社なので、モノづくりはしていないイメージってあるんですよね。依頼していただく土壌がない状況の中で、私自身モノづくりもできるんだよというところでチャレンジしてみたかったんです。そこで、カワいいモノ研究会に中本本店のクリエイターとして参加しました。
今回、筆を使った商品の開発をお手伝いしたのですが、日常の生活に溶け込むものを一から作って販売するのは晃祐堂さんが初めてでした。

ただカワイイだけではない、世界観を作ってブランディングする

最初に携わったのは「SOMELL GARDEN」でした。元々は晃祐堂さんがハートブラシという化粧筆を作られていて、穂先の形と色がイチゴにも似ているんです。そこで、見せ方を変えてストロベリーブラシとして売っていこうということで、研究会に参加されていました。そこでご相談を受けたのですが、最近はモノ消費からコト消費へと消費の傾向が変化している中で、商品の形や色がただカワイイだけではなくて、使用シーンや、ストーリーが実は大切だと思っています。そこで、使っている時にナチュラルなイメージを感じてもらえるようにしたほうがいいのではないかと考えて、果樹園の中で果実に頬ずりするイメージでメイクするというコンセプトで提案しました。
ストーリー的には、果実に頬ずりしたら果実の色が肌に映ったというイメージです。「染める」という言葉と、「(果実が)熟した」「豊かで美しい」「豊潤」「柔らかでなめらか」などを意味する「MELLOW」を組み合わせて「SOMELL」という造語を作り、「SOMELL GARDEN」というブランド名をつけました。デザインだけを変えるのではなくて、世界観やストーリーをしっかり作ってブランディングをしていくことで、什器やパッケージなども統一性のあるデザインで作ることができました。結果的に売場にも置いてもらいやすいモノづくりができたように思います。
晃祐堂さんの商品で「SOMELL GARDEN」のシリーズのようなナチュラル系によった商品がこれまでなかったようで、この商品ができたことで、今までとは違うお客様に話ができるようになり、新たな販路を広げる商品になっています。

そして始まった、筆を楽しむ新たなプロダクト

「SOMELL GARDEN」は化粧筆ですが、晃祐堂さんは元々は書道筆を作られていて、書道筆も新しい販路で売っていけたらという事で新しい商品開発が始まりました。最近は書道をする機会が中々ありませんし、いざやろうと思っても墨をする行為も手間ですよね。もっと手軽に、気軽に、筆を文房具として売ってみてはどうか。長い筆ではなくてペンケースに入るくらいの長さで、水さえあればかけるものであれば、筆で書くという楽しさに触れてもらいやすくなるのではないかと考えました。そこでできたのが「IRODORI」でした。

これまでにない、新しい筆の使い方を提案

「IRODORI」は鉛筆のようなサイズの筆と、墨がなくてもかける顔料がセットになっている商品です。面倒な準備もなく、水さえあればすぐ使うことができます。これまでになかった商品ということで、メディアに取材されることも多かったり、おみやげものとして折り鶴タワーにおいていただいたりと、普段と違うところへの販路が出来てきています。
「IRODORI」のネーミングは、「色の鳥」という意味もありますが、「色をとって使う」という本来の意味も込めています。「彩る」という鮮やかな色も想像できますし、色とりどりの鳥がさえずっている風景を、使う人が思い浮かべてくれたら嬉しいですね。

日本の文化を再発見できるしかけ

今、スマートフォンが全盛の世の中で、書くという行為が昔より減ってきていますよね。特に筆を使って書くという、日本の文化が失われていく中で、筆で書くことの楽しさを再発見してもらいたいと思っています。そこで、楽しく書くために色の種類を作って色で選ぶという事にもしたかったんです。書という和の文化にもこだわっています。こちらにセットされている画材は日本画にも使われる“顔彩”と呼ばれるもので、水彩絵の具とはまた違った和の彩りを楽しめます。和紙との相性もとても良いです。また、パッケージに使っている紙ですが、理想の色を出すためには白い紙にカラー印刷した方がはやいところを、元々ある色和紙の中からあえて選び、ロゴを白で印刷しました。その色和紙は日本文化特有の色彩感覚に基づいた色揃えをうたったもので、こちらを採用することでより日本の文化にフィットした商品になったように思います。

初めてのプロダクトデザインで見えた課題

私は元々グラフィックデザイナーなのでCADなどの3Dソフトが使えるわけではないんです。「SOMELL GARDEN」は既存商品のリテイクだったのでそこまで設計図面をおこすことがなかったのですが、現在晃祐堂さんと一緒に進めている新しい商品は図面からおこしていったので、職人さんに「この商品の裏側はどうなっているのか」と聞かれたときに、頭の中ではイメージできていて平面図にはおこせるのですが、3Dで立体的には見せられなくて。結果的には正面、裏面、側面など、ほかの方向から見た平面図を書いて説明しました。
また、このような形での売り物を作るのが初めてだったので、コストとクオリティのバランスのつけ方には苦労しました。やはり色々凝ってしまうとコストが上がり、売値が上がってしまいます。ターゲットは比較的若い世代だったので、高すぎると手に取られにくくなる。そこはシビアに考えて設計しました。パッケージなど印刷面では外注に出さずに自社でできるので、印刷会社で良かったなと実感した部分でもありましたね。

ビジュアルとストーリーを押し出したブランディングで販路の拡大

晃祐堂さんはハートブラシやフラワーブラシなど、自社でも企画製品は数多く作られてはいらっしゃいましたが、外部のデザイナーと一緒にビジュアル的なブランディングを入れ込んだ商品作りはあまりされていなかったそうです。なので今回のようにデザイナーと商品を作ったことで、販路が広がり、仕事も広がっていく、好循環ができたんじゃないかなと思います。
私にとっても初めてのプロダクト設計だったんですが、やってみたらできないことはないんだなと実感しています。何より、今回やりとりさせていただいたのが社長の土屋さんご本人でしたので、思いを直に聞けて商品開発もスムーズに行うことができました。企業さんや職人さんとの対話やコミュニケーションをとって進めていくことで、意外と難しいこともクリアしていけるんです。自分の役割を全うすることで、やれることのフィールドが広がりました。

ネットにはない、直接の対話から生まれる可能性

今はインターネットでどこにでもつながれますよね。でもネットではない、直接のやり取りで対面しながら一緒にモノづくりできる環境は貴重でありがたいことだと感じています。実際に話しながらやり取りすることで、一人では気づけなかった事にも気づけますし、もっとこうできるんじゃないか、こうした方がよくなるなどの対話の中から選択肢が増えて広がりが増すんです。そのあたりは今後も大切にしていきたいと思っています。

旅行代理店のように、お客様を新しい世界へお連れする仕事がしたい

私自身、イメージとして旅行代理店のような存在になれたらいいなと思っていて、お客様をこれまで行ったことのない場所にお連れしたり、行ってみたいと思ってもいなかった場所へつなぐ役割ができたらと思います。企業さんのお話を聞いて、何が必要なのか、パッケージを変えるだけでいいのか、商品自体を変えるのか、販売促進ツールのご提案が必要なのか、まずは相談していただいて、広くお話をしていく中で、何に一番力をいれたらよいか最適なものを一緒に考えていきたいと思っています。今後も、対話から始まる仕事をしていけたらと思っています。

土屋 武美
株式会社晃祐堂 取締役社長
株式会社中本本店

1919(大正8)年の創業。印刷物を中心に、近年ではウェブや映像など多様なメディアの企画・デザイン・製品化に対応。お客様のビジネスに最適な制作物をご提案し続けています。

広島市中区東白島町13-15
TEL
082-221-9181
082-221-9181
FAX
082-227-5129
WEB
https://www.nakamotohonten.co.jp/
従業員数
94名
創業
1919年
吉川 富美子
デザイナー

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SOMELL GARDEN
プロダクト/グラフィックデザイン
HOSHI ShiiKakeo
グラフィックデザイン
ブリキ
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